コロンビア大学院で再び「ビリギャル」に 小林さやかさんの「次の目標」は?
映画化もされたベストセラーのモデルであり、「ビリギャル」として一世を風靡した小林さやかさん。書籍の発売から10年が経った今、アメリカの名門・コロンビア大学教育大学院で認知科学について学んでいます。ビリギャル時代を経て、世界中から集まった学生と一緒に学びながら、彼女が目指す次のステージとは? 【写真】「ビリギャル」は日本だから生まれた 小林さやかさんが語る日米の受験システム
――現在学んでいるコロンビア大学大学院の人たちも、「ビリギャル」に関心があるのでしょうか。 そうですね。この間は教授に頼まれて、授業でビリギャル時代のことについてスピーチしました。大学受験前には1日15時間ぐらい勉強していたと話したら、教授から「それは異常だ」と言われました。 ――日本の受験勉強は、「異常」ですか(笑)。 「そんなに長時間勉強するなんてやめたほうがいい」「あなたはそれをどう思っているの?」と言われて、「確かにキツかったけど、日本にはそれをよしとする文化がある」と答えました。中国人や韓国人など、東アジアの国の人しかこの文化は理解できないようでしたね。 一方で、アメリカに来たからこそ、日本の教育の素晴らしさを実感するようにもなりました。日本はとにかく先生の質が高いと思います。識字率も高いし、PISA*でもずっと上位を保っています。逆にこのテストでずっと苦戦しているのがアメリカなんですよね。でも、日本の先生たちは海外の状況を知らないし、国内では批判も多いので、自分たちを卑下してしまっている。自信のなさ、自尊心の低さは、日本の子どもたちだけでなく、日本の大人が抱える深刻な課題です。これをどうしていったらいいのか、この10年間ずっと考えています。 *OECD(経済協力開発機構)が行う、国際的な学習到達度調査。数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力を測る。 ――小林さん自身は海外留学も果たして、周りから「エリートになったね」などと言われませんか。「もうビリじゃないし、やっぱり地頭が良かったんだね」とか。 エリートになったとは言われます(笑)。でも、私はけっこうやりたいことをアツく語るからか、「学歴がほしいだけなんだろう」とか思われることはあんまりないですね。地頭が良いというとらえ方は、結果論ですよ。私は本当に出来なかったし、コロンビア大学大学院では、またビリになったし。 私、今いる大学院でだれよりも英語ができないんです。大学院の受験前から「英語が一番きついだろうな」と思ってめちゃくちゃ勉強してきたけど、最初のオリエンテーションの時に、何を言っているのかわからなさすぎて、感動して泣けてきたぐらい(笑)。 ――「わからなさすぎること」に、感動できるのですか。 そうそう。「ああ、私、すごいところまで来たな。こんな人たちと一緒に勉強するんだ」って。「ここで頑張ったらまた伸びるんだ。卒業するときにはどうなってるんだろう」と思ったら、ワクワクして泣けてきて。自分のコンフォートゾーンを抜けてやりたかったこと、感じたかったことはこれだったんだよなと強く思いました。ビリ上等! 成長しかないから。英語は大学で一番ヤバいけど、ビジョンのデカさも、たぶん私が一番だと思います(笑)。 ――どこまで伸びるのか、楽しみですね。留学を決めたときの周囲の反応はどうでしたか。 もうここまで来たら、誰も真剣に止めたりはしなかったですね(笑)。家族も友人も、「次は何を言い出すかと思ったら、今から留学かあ、そうきたかあ~」っていう感じ。今回はみんな、すごく応援してくれました。こうやって周囲の理解が得られるようになったのも、これまで自分が出してきた実績ありきだなあと。 そして、私がまた挑戦したことによって、「自分も、さやかちゃんと一緒になにか挑戦する!」というメッセージをくれる人がとっても増えました。学生だけじゃなく、大人の方からも。こうやって、がむしゃらに挑戦できる大人が増えたら、子どもたち、絶対変わると思うんです。坪田先生がよく言っているのですが、教育の本質は「憧れ」です。かっこいい大人が増えることが、一番の英才教育だと信じてます。