上田晋也 転機となった、いとうせいこうとの出会い「そこから僕は、うんちくの勉強を始めました。大学受験よりもはるかに勉強しましたから」
◆いとうせいこうの“記憶力”も怪しい!?
上田:いとうせいこうさんって、クレバーで先を見通す力がある人なんですけど、まあ記憶力が俺以上に酷いんですよ。 植竹:それは意外! 上田:何回も同じ話をするんですよね。「せいこうさん、それ聞きましたよ」って言えないから、黙って聞いていることもあります。 せいこうさんが自分でもビックリした話があるんですけど。あるとき、せいこうさんが引っ越しをすることになって荷造りをしていたんですって。昔のレコードがいっぱいあるから、捨てるのと保管するのを選別していたらしいんです。 植竹:うんうん。 上田:1枚1枚見ていたら、香港のアクション俳優のユン・ピョウのレコードが出てきたんですって。「なぜ俺はユン・ピョウのレコードを持っているんだろう? 聴いてよかったから買ったに違いない。最後に1回聴いて手放そうかな」とせいこうさんは思って、聴いたそうなんです。そうしたらメロディーが普通で悪いわけではないけれど、詩がすごくよかったと。 植竹:ほう! 上田:「詞を書いた人は天才だな」と思って、歌詞カードを見てみたら「作詞:いとうせいこう」って書いてあったんですよ。 植竹:あっはっは! 上田:それはさすがに覚えているだろって話じゃないですか。自分の書いたフレーズを聴いたら、出だしとかでわかりますよね。あの人は自分が書いたってことを歌詞カードを見るまでわからなかったんですよ。 植竹:マチャアキさんもそうだけど、そういう人っていうのはどんどん(記憶から)捨てていくんだねえ(笑)。 上田:どんどんリセットしていくんでしょうねえ。 (「歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ」2024年月2日9日(金)配信回より)