日本人の英語力「世界92位」凋落は国際競争力低下と“連動”、弱点克服ツールはChatGPT!?
● 添削で「書く力」高められる 要約と翻訳で論文の理解も楽に 社会人の場合に重要なのは、自分が専門とする分野での英語だ(ただし、外国で生活する場合を除く。この場合には、日常生活に必要な一般的な英語を習得する必要がある)。 ChatGPTは、会話の勉強に使えるだけではない。文章を書く練習にも使える。いまは仕事の上でメールによる連絡をすることが多くなっているので、英語で「書く」ことの重要性は従来に比べて著しく増している。 「英語を書く」勉強も、次のようにして進めることができる。まず自分で英語の文章を書いてみる。それをChatGPTに添削してもらう。この過程を繰り返すことによって、文章を書く表現力を高めることができる。 外国語に関するChatGPTの寄与として、文献の翻訳と要約も極めて重要な機能だ。 特に使用頻度があまり高くない言語や、いまからでは習得が困難な言語はChatGPTに頼るのが現実的だろう。 例えば、中国語や韓国語を勉強しなかった人が、これから学習するのは大変だが、翻訳・要約機能に頼ることで済む場合が多い。 英語の場合でも、極めて長い論文のどこに重要な内容があるかを見いだすのは、日本人にとってはなかなか難しい。そうした場合も、まず全体についての要約翻訳をChatGPTに作ってもらい、それを頼りに、自分の知りたいことが書いてありそうな場所のもう少し詳しい翻訳を出してもらうという過程を繰り返すことによって、長文の論文でも知りたい内容に素早く到達することができる。 日本人はこれまで外国語の資料を敬遠する傾向が強かった。しかし、翻訳書や翻訳記事を読むだけでは世界の最先端をフォローすることは難しい。上述の方法を取ることによって、中国語など英語以外の文献を読むことも容易になる。そして英語についても最先端の論文を読めることになるだろう。 とりわけ英語は世界の共通言語だから、英語圏以外の人々とも英語を用いれば簡単に意思疎通をすることができる。従って、口頭のコミュニケーションは、相手がどんな国の人であっても、英語を用いればほとんど問題がないだろう。 文字情報についても、多くの文献が英訳されている。英訳されていないものについても、ChatGPTの活用によって、簡単に日本語にして読むことができる。 このようにして外国語の勉強は、特殊な事情がある場合を除いて英語に集中すれば、日本人の言葉のギャップは克服できるはずだ。 (一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)
野口悠紀雄