教えたはずが教えられた 知的障害ある生徒と交流する慶応 センバツ
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)で21日の初戦に臨む慶応(神奈川)は、2022年1月から知的障害のある生徒たちと合同練習に取り組んでいる。甲子園に憧れる特別支援学校の生徒は少なくないが、大半の学校に硬式野球部がない。交流を深めるそんな生徒たちも甲子園を目指してもらおうと、慶応ナインはまず自分たちが全力プレーすると誓う。 【似てる? PL時代の清原さんと次男・勝児選手】 合同練習は東京都内の特別支援学校の教諭、久保田浩司さん(57)が21年3月に始めた「甲子園夢プロジェクト」の一環。そのスタッフに慶応大OBがいた縁で、久保田さんが慶応高の森林貴彦監督(49)に参加を依頼した。日ごろから選手たちに人間的成長を求める森林監督が快諾し、これまで4回開かれた。東京都などの高校5校が参加したが、甲子園出場経験があるのは慶応だけだ。 合同練習では、知的障害のある野球好きの生徒を全国から募集。重度の知的障害の子どもを持つプロジェクトのスタッフは「(慶応野球部員は)障害者だからといって特別なことはせず、友達のように普通に接してくれる」と話す。 センバツ出場が決まった翌日の今年1月28日にも、慶応のグラウンドで合同練習があった。特別支援学校や特別支援学級の生徒らが「センバツ出場おめでとうございます」とあいさつすると、選手たちは帽子を取って感謝。その後、慶応の選手たちがアドバイスしながら約3時間半にわたってティーバッティングやシートノックに取り組んだ。 慶応の福井直睦(なおとき)選手(3年)は「支援学校の生徒たちの方が声が出ていたので見習いたい。当たり前に野球ができることに感謝の気持ちが芽生えた」と話す。森林監督は「選手たちは教えていたが、実は教えられていた。純粋に球を追いかける姿を見て、目の前の一球の大切さに気づかされたと思う」と指摘する。 21日の相手は、昨夏の甲子園を制した仙台育英(宮城)。スタンドには、強敵に挑むナインを後押ししようとプロジェクトに参加した特別支援学校の生徒たちも駆け付ける。北村真大(まひろ)さん(15)は「慶応の選手たちは目標。甲子園で勝つ瞬間を見せてほしい」と期待を込める。【田中綾乃】