【ホンダ CL500 試乗】風雨も砂利もお構いなしに使い込みたくなる…伊丹孝裕
◆高いエンジンスペックも高度な電子デバイスも必要ない
CL500の印象を手短に表現すれば、リズミカルなバイクである。フロントフォークのストローク量とリアサスペンションのトラベル量は、それぞれ150mmと145mmという余裕のあるもので、鷹揚とした乗り心地に貢献。前後方向のピッチングもわかりやすく、スロットルのオンオフやブレーキへの入力加減ひとつで、車体姿勢の変化をコントロールできる。
もっとも、コントロールというような小難しい話ではなく、勝手にそれができてしまう。スロットルを開ければ、リアタイヤがグッと路面を蹴り出し、ブレーキを掛けて左右どちらかに傾ければ、スッと旋回。そのプロセスが極めて容易であり、シンプルな正立フォーク、必要十分な制動力のシングルディスク、安定性と走破性に優れるフロント19インチホイール、150/70R17という細身のセミブロックリアタイヤ(ダンロップのトレイルマックス・ミクスツアー)等の効果も手伝って、鼻歌のような気分でスイスイと操れるのだ。
法定速度+□の中でいかに扱えるか、そして楽しめるか。そこに狙いを定めれば、高いエンジンスペックも高度な電子デバイスも必要なくなり、物理的にも心情的にも軽やかなバイクになる。その好例が、このCL500である。
数少ないリクエストは、ステップの中途半端な位置だ。停車時に、足をステップペグの前に降ろしても後ろに降ろしてもしっくりこず、どちらの場合でも脛やふくらはぎが干渉しがちだからだ。ただし、欧州向けに発表された2025年モデルでは、どうやらこれが改善されている模様。これによって、その万能性にさらに磨きが掛けられていそうだ。
■5つ星評価 パワーソース ★★★ ハンドリング ★★★★ 扱いやすさ ★★★★★ 快適性 ★★★★ オススメ度 ★★★★
伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。
レスポンス 伊丹孝裕