基礎的財政収支(PB)の2025年度黒字化は本当か
まずはより現実的な目標に修正したうえで引き続きPB黒字化を目指す
実際のところは、2025年度のPB黒字化の達成は困難であり、目標達成時期を遅らせるなど現実的な対応をしたうえで、財政健全化達成の具体策の議論をしっかりと始めることが重要だろう。 歳出から国債費(国債の利払いと償還)、歳入から国債発行による資金調達分を除くPBの黒字化を財政健全化の目標としてきた理由の一つは、公共建設インフラは将来世代も利用するために、その負担は将来世代も担うことが、負担の公平性の観点から求められる、との考えに基づく。国債がすべて公共建設インフラを賄う建設国債であれば、PBが均衡した状態で、世代間の公平性が保たれ、将来世代への妥当でない負担の転嫁がなされていることにはならない。 しかし現状では、国債の大半が赤字国債であることから、PBの黒字化は、世代間の負担の公平性の観点から重要な指標とはいえないだろう。それでも、PBの黒字化に代わる、当面の財政健全化目標は見当たらない。 こうした点を十分に理解した上で、財政健全化の「一里塚」として、より現実的な目標に修正した上で、政府はPBの黒字化を引き続き目指して欲しい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英