情熱溢れるフランスへのリスペクトと想い。菓子職人「MORI YOSHIDA」(モリヨシダ)吉田守秀 -特別インタビュー-
フランス菓子の本質と「今」を「MORI YOSHIDA」のフィルターを通して描く
フランスに長く住み、現地の食材に出会い、空気を吸い、フランス人の生活と文化に根付くフランス菓子を知ることに傾倒した吉田シェフ。王道であり、お菓子の根幹にある「クラシック」を組みながら肌で感じた「今」の流れをお菓子に昇華させていく。ブリオッシュ生地にシロップやラム酒を効かせた伝統菓子でもあるババ・オ・ラムをアレンジした「ババ・トロピック」は、「MORI YOSHIDA」のスペシャリテだ。日本的な素材と言われるユズや抹茶といった食材はあえて使わなかった。「日本人である」というアイデンティティよりも、吉田守秀というアンデンティティを作ることに神経を注いだ。そんな吉田シェフがこの日本で表現するのは、「フランスの今」。それはSNSが発達し新しく生まれた流派のフランス菓子でもなく、ニホンライズした現代日本の新しいケーキでもないと吉田シェフは話します。吉田シェフ「まず今のフランスでいうと、ピエール・エルメ氏が作り上げてきた流派がずっと根強くありました。そこから、今では世界的スターにもなっているセドリック・グロエ氏やラデュレのジュリアン・アルバレスが“SNSを活用するとこうなるんだ“という新しいビジネスモデルを作り上げました。一方で僕は僕で、お菓子が本当に好きで正しいフランス菓子とは何かと向き合い続けています。季節や旬の食材を大事にしながらも向き合って表現していく。それがモリヨシダのお菓子です。一方で今回の日本のお店での開業において、ラインナップの中にシュークリームがあります。実はこれは日本のお菓子で、日本では『シュー・ア・ラ・クレーム」』という名前でフランス菓子のように販売されているシュールな現象があります。ではなぜモリヨシダでシュークリームを出すのか? それは今このシュークリームというものがフランスではポピュラーになってきているから。“日本フェア”みたいなものがフランスでもあります。フランスで日本生まれのこのお菓子が人気あるんだということを伝えたい、その想いもあってこの商品をラインナップに加えました。日本のフランス菓子は70年代、80年代にフランスへ行った先輩たちが日本に持ち帰り、それがフランス菓子とされています。時代とともにその文化は時代とともに変化していて、今日本にあるフランス菓子がフランスにないことも多いですa。その中で、今のフランスをリアルに切り取ったものを出して伝えていきたい。フランスでは定番が重宝されます。毎日食べたいものをなんだろうか? とふと考えると、自分が大好きなサッカーを見ながら、何も考えず食べられるものを並べておきたいし、食べさせたいし、何よりも輝くものにしていきたいと思っています。」