令和に金田のバイクブーム到来か。タイから量産を目指したオマージュEV登場
2000年代の金田のバイク実車化ブームと市販化の難しさ
もっとも、市販化には高いハードルがある。それは言わずもがな、権利関係をいかにクリアするかだ。まず工業デザインとして見た場合、製品や商品のデザインを独占的に使用できる権利である、意匠権が関わってくる。 ここで取り上げたいのが、20年以上前の2003年、金田のバイクをオマージュしつつも、市販化に成功したバイクについてだ。それこそが、アークシステム・プロアムというカスタムショップが手掛けた「スティングレイ」。当時、消費者リクエスト型ショッピングサイト「たのみこむ」での受注生産から始まり、後に反響を受けて量産化していたのだが、現在では同社のホームページにも記載がない幻のモデルとなっている。 VツインマグナのV型2気筒250ccエンジンやリヤ周りを流用していたことを除けば、フロントのハブセンター・ステアリング、フロント14インチ/リア17インチという、金田のバイクとしては控えめなタイヤサイズを採用していることなど、構成もK-1988に近しい。 スティングレイは意匠権を2005年10月に取得しているということも、特筆すべき点だ。クルマやバイクのデザインは、似通ったものがすでにあるとしても、独自の要素が一部でも認められる限りは意匠権を取得できる傾向にあるためだろう。スクリーンよりも高く配置されたシート上部や、車両名の由来ともなった”エイ”のように車体前方左右に張り出したカウリングは、確かに金田のバイクにはないデザインだ。とはいえ、こちらの権利は有効期限が2020年に切れている。同名のバイクとして販売しない限り、K-1988の市販化の足かせとなることは、ほぼないだろう。 次に2次創作物やフィクションをベースにしたグッズとして見た場合、知的財産権の筆頭ともいえる著作権が関わってくる。こちらに関しては、著作権保持者の意向次第というのが実情だ。もちろん、営利目的のPRや収益を得るにあたって、「これがリアル金田のバイクだ」とか、「金田のバイクを忠実に再現した」と公言してしまったり、あたかも公式であるかのように振る舞ってしまったら、まずアウトだ。 実際、前述したオマージュバイクのスティングレイは、たのみこむの受注ページでも、「1988年、日本アニメ界に革命が起きた。その作品に登場した独創的且つ創造的なフォルムを持つ、バイク乗りの垂涎の的となった伝説のバイク。時は2019年~どこかで見覚え・聞き覚えのある西暦と、このスティングレーのフォルム。そうです!まさにアレ(言えませんが…。)です!!」という説明で、何を意識したかの明言は避けていた。当時のカタログページでも、「金田のバイク」という言葉はひとつもでてこなかったほどだ。 一番は著作権者の許諾を得ることだが、ライセンス料は高額になりがちだし、ひとたび例外を許すと歯止めが効かなくなるというのも世の常。スマーテック・モーターはK-1988について、「版元に怒られたらやめます」と妙に潔いコメントを残していたが、どうなることやら。現状のスタイリングを踏襲しつつ、権利関係をクリアして世に出してほしいものだ。続報が待ち遠しい。
石川順一