余熱利用や景観配慮で進化する地熱発電 発電量全国2位の秋田県で新設続く
火山大国日本で再生可能エネルギーとして大きな可能性を秘める地熱発電。24時間安定供給でき、余熱は温泉や暖房、農漁業、食品加工など地元活用される。発電所を自ら経営する地域もあり、自然景観に配慮した目立たない施設の設計・配置も普及している。発電量全国2位の秋田県ではさらなる新設が続く。また、原子力並みパワーがあるとされる超臨海地熱の研究・実用化にも期待がかかる。 【写真】発電所とは別の源泉ながら秋田県湯沢市の皆瀬地熱利用農産加工所が温泉熱で乾燥させたリンゴチップ ■安定出力が強み 風力や太陽光発電が風や日差しに大きく左右されるのに対し、地熱発電は24時間安定して発電・出力できることが最大の強みだ。 地熱発電は、マグマに熱せられ250~300度になった地熱貯留層から井戸で熱水・蒸気を直接取り出す「フラッシュ発電」と、高温の温泉(70~120度)から熱交換する「バイナリー発電」がある。 地熱帯分布から東北と九州に多く集中し、合計出力は9月時点で最多の大分県が約17万キロワット、次いで秋田県約13・5万キロワットと、3位の鹿児島県(約6万7千キロワット)を引き離している。 秋田県では澄川(鹿角市)、山葵沢(湯沢市)など5つの地熱発電所が稼働中で、かたつむり山(同)と木地山(同)の2発電所が建設中。さらに6カ所で開発や調査が進む。「開発調査段階のものが将来稼働すれば秋田県の地熱発電量は国内トップになる可能性が高い」と県クリーンエネルギー推進課は意気込む。 このうち大沼(鹿角市)では、発電後の蒸気に清水を混ぜて生成した温泉を地元八幡平地区の宿泊施設などに供給している。 ■地域で経営も 産業技術総合研究所再生可能エネルギー研究センターの浅沼宏・副センター長は「(地下水が浸透してマグマに熱せられた)天然熱水型地熱資源量は米国、インドネシアに次いで日本は世界3位にもかかわらず、実際の発電量は10位で国内電源構成の0・2%にすぎない」と指摘する。 圧倒的な資源がありながら活用がはかどらない背景には、地熱貯まりにつながる地層の割れ目を探知して井戸を正確に掘ることが難しいことや「既存温泉への影響を懸念する声などがある」(浅沼氏)という。 この懸念で一度は頓挫した発電計画を住民自らが実現させ経営に乗り出したのが、わいた温泉郷のある熊本県小国町のわいた地熱発電所だ。