じつは、ジェット気流は「地球を周回」していた…天気図がわかれば、見えてくる「日本で発生・移動する高気圧や低気圧」のリアルな動き
500hPa高層天気図の見方
次に、図「500hPa高層天気図」も見てみましょう。等高度線に付された「5460、5580、5700、5820」といった数値から、高度5500 m 前後の気圧配置を表していることがわかります。高度9000m付近の300hPa 高層天気図は対流圏のかなり上層、高度5000m付近の500hPa高層天気図は対流園の中層の気圧配置を表しています。 また、図には、実線の等高度線以外にも、破線が描かれています。この破線は、等温線です。300hPa図の場合は破線は等風速線でしたから、この点が異なります。図中のマイナス(-)のついた数字は温度を表しており、-20℃から-50℃といった温度になっています。 風速の記号の近くに書かれている数字(例えば図右上の窓の-34.5、0.8 といった数字)は、「温度」および「気温と露点温度との差=湿数」です。露点温度は、水蒸気が凝結する温度なので、露点温度との差が小さいほど凝結しやすい(湿っている)ことを表します。 風向・風力の記号を見ると、500hPaでは100ノット(約50m/s)程度の強風が見られます。300hPaよりも風速は小さいです。 なお、気象庁では、300hPa、500hPa、700hPa、850hPaなど、いくつかの等圧面天気図を作成し、過去24時間以内に作成した高層天気図をホームページに掲載しています。
偏西風波動とジェット気流
ジェット気流は、太平洋戦争中にアメリカ軍のB29爆撃機がグアム方面から西に日本へ向かうときに遭遇し、発見されました。偏西風が流れる方向は一様ではなく、南北に蛇行する一種の波動であり、地上の高気圧や低気圧は上空の偏西風波動とつながった構造をしています。 等高度線の走行は、図「北半球の偏西風波動」のように、おおまかには北極を中心とした同心円状で、地球を1周しています。また、南北に大きく蛇行しており、この蛇行は時間や季節とともに変化する波動となっています。波打つ等高度線の低緯度側に張り出した部分を気圧の谷と呼びます。また、となりあう気圧の谷の距離が波長です。 ある日の高層天気図を北半球規模で眺めると、図に見るように波長の長い波動の中に、高・低気圧にともなう波動が見られ、混在しています。これらの波動は東西方向に伝播(でんぱ)し、それにともなって高・低気圧は西から東へ移動していきます。 日本のような中緯度帯で日々発生・移動する高・低気圧は、このような波動にともない発達し、移動するので、天気図をもとにした天気予報では重要な役割を担います。 天気図の日本付近を見ると、小規模な波動による気圧の谷(図中の破線)のひとつがあり、西のほうから別の気圧の谷が接近しています。このとき地上では低気圧が発達中です。偏西風波動の規模を谷と谷の間隔つまり波長で区別すると、温帯低気圧の発 達と関係が深いのは、大まかに言って波長が数千km、日本列島の長さほどのものです。 * * * 次回は、この季節に気になる梅雨の起こり方について見てみます。今回取り上げた偏西風も関係していることがわかります。次回公開は6月28日(金)公開予定です。 ---------- 図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか 図解・気象学入門 改訂版 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図 気象予報の話を中心に、気象現象の原理に迫る『図解 天気予報入門』。一方、気象にまつわる素朴な疑問から、気象と天気の複雑なしくみまで、その原理を詳しく丁寧に解説した『図解 気象学入門』。どちらも「しくみがわかる」入門書です。もちろん、2冊読めば、さらに理解が深まります。 ----------
古川 武彦、大木 勇人