本当のSDVはハードウェアの拡張も簡単になる…オートモーティブソフトウェアエキスポ
(写真:レスポンス)
NTTデータMSEは、NTTデータグループの中で組み込みシステムの開発を得意とする企業だ。同社が11月15日から17日に開催された「Edge Tech+」の企画展「オートモーティブソフトウェアエキスポ」で展示していたのは、実証実験中の電動カートとシニアカーのようなモビリティ。だが、ベースとなる技術とコンセプトはSDVの本質を表すものだった。 電動カートは、カメラ、LiDARなどを搭載した自動運転車両。自治体で行っている自動運転技術の実証実験に使われている車両だ。実験のメインは自動運転のアルゴリズムやAIモデルの研究。NTTデータMSEが担当しているのは、車両各部の制御ネットワーク部分だ。この車は、車両各部の制御やLiDARなどセンサーを「DDS(Data Distribution Service)」というネットワークとして構成している。 NTTデータMSEが提案するSDV DDSは、UDPを利用したアプリケーションプロトコルのひとつ。用途はさまざまだが、パケットにDDSのIDを付与することで、インターネットなど広域網でもグループ内のブロードキャストを可能にしている。センサーデータなどを自由にやりとりさせたいIoT系のネットワークにも適用できるものだ。この自動運転カートでは、DDSネットワークをセンサーデータを車載プロセッサに送るために利用している。 もう1台の小型モビリティは、新しいタイプの小型モビリティの提案だ。ベースとなる車両は「RODEM」という一人乗りのバッテリカー。ロボットメーカーであるテムザックの製品で、小型モビリティやロボットカーのベースとして販売されているもの。NTTデータMSEでは、車両の機能をすべてクラウドで定義できるようにしたモビリティを考えた。 RODEMはジョイスティックで動かせるシニアカーのような最低限の機能を持つ。これに通信機能を持たせたコンソールを接続する。コンソールはクラウドにつながっており、ユーザーのアカウント情報や車両の制御機能一式はクラウド上のアプリやソフトウェアが担う。この状態でクラウド側のアプリしだいで、自動運転カーにも高機能なコネクテッドカーにもなる。この車も、センサーや各部の制御にDDSネットワークを利用している。そのため、カメラやセンサーなどを追加したい場合、あるいはエンタメ機能や新しいハードウェアを追加したい場合も、USB機器をつなぐ要領でDDSネットワークに接続すればいい。 NTTデータMSEが提案するSDV 自動運転カートでは、DDSネットワークは車両内部で閉じていた(カートは5Gでクラウドに接続し、リアルタイム遠隔操作も可能)。RODEMベースのモビリティは、コンソールがクラウドにつながっているが、DDSはUDPというインターネットプロトコルを利用しているため、ネットワークリンク(無線、有線、モバイル網など)は問わない。車両内部のネットワークをインターネット経由で特定のクラウドまで拡張できる。 車両の詳細機能はすべてクラウド上(のソフトウェア)にあり、車両はバッテリーやモーターなど走行に関する機能さえあればなんでもよいことになる。各部がDDSネットワークに対応できれば、アクチュエーター、モーター、バルブ、センサー、カメラ、スイッチなども、ネットワークのノードとして任意に追加することが可能だ。機能はソフトウェアでいかようにも交換できるので、コンソールに接続するのは、たとえばドローンでもよいことになる。 IVI機能や自動運転機能の本体はすべてクラウド。通信可能なコンソールと車両をつなげば、どのような車両にもできる SDV(Software Defined Vehicle)とは、単に車がソフトウェアで制御されることではない。ソフトウェアによってモビリティが定義される状態だとすると、まさにNTTデータMSEの車両がそれを示していた。
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レスポンス 中尾真二