人気漫画『違国日記』映画化で監督・脚本、瀬田なつきさんインタビュー。「一読者として引き込まれました」
わかり合えなくて当然、だから大切で、愛おしい。
他人というわけではないけれども、ほぼ知らない人と暮らすことになったら……。昨年、6年にわたる長期連載の幕を閉じた、ヤマシタトモコさんの人気漫画『違国日記』。瀬田なつきさんが監督・脚本を手がけた映画は、原作の繊細で優しい世界観を閉じ込めた作品に仕上がっている。 「朝と槙生が出会い、それまで見えていた風景が少しずつ変わっていくのが、劇的にではなく日記のように淡々と描かれていて、一読者として引き込まれました。脚本に着手したときは、原作が完結していなくて、ヤマシタさんにお聞きしたら、ラストを決めずに描いているとのことでした。なので映画としてどういう形にするか悩んだのですが、2人の暮らしをスケッチしていくことで、徐徐に距離感や関係性が違って見えてくると面白いかなと思いました」
無愛想で人付き合いが苦手な小説家の槙生(新垣結衣)は、絶交状態だった姉が交通事故で亡くなったことから、姪の朝(早瀬憩)を引き取ることに。15歳の朝にとって槙生は大人らしからぬ大人で、槙生も人懐っこくて素直ながら、大きな喪失感を抱える朝の扱いに戸惑っている。 「新垣さんは静かな雰囲気のなかに強さがあって、最初にお会いしたときから『槙生だ!』と思いました。槙生は基本的にクールなのですが、絶妙なさじ加減でコミカルさを覗かせる演技も、さすがだなと。早瀬さんは朝に自分を重ねながら、楽しんで演じてくださっていました。順撮りではないので、槙生と朝のシーンはその都度、距離感などを相談しながら作っていきました。新垣さんが早瀬さんをリードしてくれつつ、緊張気味の朝が槙生に徐々に懐いていく感じを出せたと思っています」 “自分という国”の常識や価値観が、必ずしも他者に通用しないのは、大人になる過程で気づくことであり、大人になってもなお、驚かされる機会は多々あるものだ。槙生と朝がともに過ごす時間は、わかり合えなくても尊重すること、向き合おうとすることの大切さを教えてくれる。 「原作は、モノローグなど言葉で丁寧に内面が紡がれるのですが、映画では、その瞬間しかない役者さんの表情や、そこに暮らす風景を通して、コマの間に流れるものを映すことを意識しました。観る人の数だけ捉え方があると思うので、自由に発見をしてもらえたらうれしいです」