いったいなぜ…!習近平が「人民元安」に誘導か…日本経済にも影響が及ぶ、中国の「隠された思惑」
よみがえる「2015年の人民元ショック」の記憶
もう一つの考え方は、中国がデノミ級の大幅切り下げを考えており、その動きに向けたものだという見方だ。 5月にニューズウィークが報じていたのだが、中国がゴールド、石油など戦略物資を買い増しする動機の背後に、いわゆる「核爆弾級オプション」、つまり人民元大幅切り下げによる経済救済を排除しない可能性がある、という噂があった。 いろんなシナリオがあるが、ブルームバーグが紹介していたアンリミテッド・ファンドのボブ・エリオットCEOは、「一回限りの意義ある切り下げで、割安感のある水準に切り下げてその水準を維持する」というもので、10~20%の切り下げを想定していた。 だが、大幅に切り下げれば、世界の為替市場は不安定化し、人民元の魅力も信用も失われ、ドルに取って代わる国際通貨になるなどという夢は完全に潰える。 2015年8月11日、習近平政権は人民元を1.9%引き下げる大胆な切り下げを行った。 人民元改革がはじまって20年ぶりの大幅切り下げだが、これは中国にとって手痛い失敗となる。この切り下げで市場は混乱し、元安はさらに進行、これを防ぐために外貨準備1兆ドルを取り崩した。7000億ドルにまで減った外貨準備のために、いろんな資本規制導入を余儀なくされ、人民元国際化の夢どころではなくなった。 いわゆる2015年人民元ショックである。 もし今、それよりも大胆な切り下げを行うのであれば、その選択肢はロシアのプーチンにとってトドメを指すことになる、という見方もある。 プーチンは昨年8月のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会議で、ドルの重要性低下は不可逆的だと語り、「脱ドル決済」を宣言しているのだ。 そのタイミングで人民元が切り下げられたら、プーチンの面子もつぶれる。急に切り下げられた通貨など国際市場では敬遠される。ドル支配をきらう新興国、途上国も人民元を手放し、人民元経済圏の設立など夢のまた夢だ。 習近平政権が2015年人民元ショックを再び繰り返すとしたら、学習能力がなさすぎだろう。