旧統一教会が「改革」を強調する裏で飛び出した韓鶴子総裁の「日本賠償」発言 内部からも疑問の声 本当に変われるのか?
教団と自民党とのつながりは1968年にまでさかのぼる。安倍元首相の祖父・岸信介元首相が、対共産主義を掲げてつくられた教団の関連団体「国際勝共連合」に賛同したことが始まりとされる。保守政策へのコミットを目指す教団側と、数万ともいわれる教団票を求める政治家側。利害は一致し、持ちつ持たれつの関係となっていったとみられる。 自民党は昨秋、所属国会議員180人が祝電の送付や会合の出席、選挙協力などのつながりがあったとする調査結果を公表した。また、共同通信が昨年11月に実施したアンケートでは、都道府県議、知事、政令指定都市市長334人が接点を認め、自民党が8割を超えた。中央政界にとどまらない教団の浸透具合が浮き彫りとなっていった。 ▽安倍氏を「敬愛し、信頼していた」 「政治参加は国民の権利で、考え方が同じ政治家を応援するのは当然のこと。(自民議員が)関係を取り沙汰されて謝罪しているのはとても悲しいことだった」。教団の勅使河原秀行・教会改革推進本部長は事件から1年になるのを前に取材に応じ、こう話した。元首相のことは「共産主義に、はっきりノーと言った代表的な政治家。敬愛し、信頼していた」としのんだ。
こうした両者の関係をかねて警戒していたのが、1987年に設立され、教団による被害に長年向き合ってきた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)だった。「安倍元首相にも他の政治家にも、教団にエールを送るような行為はやめていただきたいと繰り返しお願いしてきた」。弁連の山口広弁護士は、銃撃事件の4日後に開いた記者会見でこう強調した。 山口氏はその後の取材で「教団の問題がこんな形で噴出するのは不幸な出来事だった」と事件への無念を語った。今も新たな被害の掘り起こしに努めている。弁連が中心となってつくられた「全国統一教会被害対策弁護団」には全国各地から相談が寄せられている。今年2月以降、元信者や家族ら31都道府県の計109人分に関し、献金や物品購入などの財産的被害と慰謝料を合わせた約35億円の賠償を求め、教団側に集団交渉を申し入れている。 ▽「苦しみに気づける社会を」 事件後は、こうした直接の被害者だけでなく、山上被告と同じような境遇の宗教2世から苦しみを訴える声が相次いだ。「親の愛を受けられなかった」「借金で家庭が崩壊した」「誰にも相談できなかった」。こうした声に押され、政治や行政が動き出した。