【香港 国安法4年】「教育の最後のラインを守っていく」かつて民主派支持の教員が今も教壇に立つ理由
香港の小学校教員: 「高学年の児童は2019年の大規模な抗議デモのことを知っています。自分の将来のことを考えれば『歌わない』という選択はないのです。自分からすればおかしいと思うが、香港政府は中央政府の指示にきちんと対応し、中央政府はその成果を見て喜ぶ。そういうことなのです。香港では本当に愛国心からなのか、罰せられるのが嫌で仕方なく歌っているのか、それはわかりません」 一方で低学年の児童は、一生懸命国歌を歌っているという。2019年の抗議デモに触れていないか、あるいは記憶に残っていない世代だ。こうした世代は授業でも、新たなカリキュラムで学ぶこととなる。 ■教員は政府の“喉と舌”になってしまうのか 2021年に香港の高校では「通識(リベラル・スタディーズ)」が別の科目に置きかえられた。通識は時事問題などを複数の観点から考え、香港社会の多様な意見を育んできたとされる。「天安門事件」などもテーマとして扱っていたが、通識によって“反政府的”な考えが生み出されるとして、国安法の標的となったのだ。そして小学校でも科目の変更があり、来年から「人文科」が導入される。この中で児童らは「愛国」や「国安法」についても学ぶこととなる。 香港の小学校教員: 「簡単に言うと『我が国は素晴らしい』と教えなければなりません。教員は教えたくなくても、学校から言われれば選択の余地はありません」 一方で香港はかつて「天安門事件」も「文化大革命」もタブーではなかったし、児童、生徒の親世代はもちろん自由な時代を知っている。こうした背景から、教育局は急速な“中国化”は受け入れられるとは考えておらず、段階的に変更を進めるものとみられる。 男性教員は授業中にデモや政治の話題になると「学校では政治のことは討論しないよ」と“無色透明”を装っているという。今はこの方法で凌げているが、この先教員は政府の“喉と舌”(中国国営メディアが共産党の広報的な役割を担うことからこのような表現が使われる)になることを求められる可能性もある。その時、5年前の民主派による「大規模デモ」について問われれば、どう答えるのか。