「12球団調査書」「1位もある」中学時代“控え捕手”からドラフト候補投手に…神戸弘陵・村上泰斗を初めて見た日の“事件”「152キロだって…!?」
今年のドラフト会議有望選手のひとり、神戸弘陵・村上泰斗投手。筆者が初めて彼を目撃した際にたまたま計測した球速「152キロ」が、小さな波紋を呼んだ――周囲はもとより、選手本人にも影響しかねない“最高球速”の実態を、自戒を込めて追った。<全2回の前編/後編を読む> 【貴重写真】大谷17歳、超細いのに甲子園で衝撃の特大HR、ぷっくり捕手な村上17歳。ガリガリな柳田、ヤンチャそうな学ラン姿の張本、実は投手だった王さん…名選手140人超の高校時代を見る 投手歴は高校入学後の2年半のみ。そこから最速を153キロにまで伸ばし、ドラフトを前にして、プロ12球団から指名の可能性を示す「調査書」を受け取った。 そんなシンデレラストーリーを歩んでいるのが、神戸弘陵の本格派右腕である村上泰斗だ。 旧チーム名である「スカイラーク」の愛称で親しまれる大阪箕面ボーイズでプレーした中学時代は捕手。神戸弘陵を指揮する岡本博公は、「控えのキャッチャーでしたね」と振り返るが、村上本人はやんわりと補足する。 「智辯和歌山に行った福元(聖矢)が1個下にいて。自分と同学年のピッチャーが投げるときは自分が受けてたんですけど、1個下のピッチャーが投げることが多くて、そのときは福元がキャッチャーでした。そういうときは、自分が内野や外野で出る、みたいな感じでした」 2人の認識に若干のズレはあるものの、投手経験を持たないまま高校に入学したのは事実だ。ボーイズの監督が神戸弘陵出身だった縁で進学すると、岡本が腕の振りの強さを見抜いて、投手転向を提案。これを転機に、一気に才能が花開いた。 直球の回転数は、プロ野球の投手の平均値が2200から2300回転とされる中、最大で2600回転を計測したこともあるという。良質の直球はプロのスカウトたちを魅了し、「2位以内には消える。展開によっては1位もあり得る」との声もささやかれている。 村上が本格派右腕として飛躍し、指名有力候補を飛び越え、「ドラフト上位候補」と呼ばれるようになり、私は心底安堵している。それは、1年前の“ある出来事”が関係している。
1年前の、とある練習試合
言おうか、言うまいか。映し出された数字を前に逡巡した。 薄い青色のスピードガンの背面にある、球速表示画面には「152」が点滅。大仰な数字に困惑していると、後ろからいたずらっぽい声が響く。 「152、出たなあ!」 声の主は、ともに試合を観ていた、島根の益田東を率いる大庭敏文である。 時は昨年の5月末日。この日、島根県益田市にある益田東のグラウンドで、同県の開星、そして神戸弘陵との練習試合が実施されていた。 益田東と開星による1試合目が終わり、グラウンドでは開星と神戸弘陵との一戦が行われている。益田東は最終の第3試合で神戸弘陵と対戦予定で、大庭は観戦しながら待機していたのだ。
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