幻覚キノコの成分「シロシビン」に抗うつ薬に類似した効果、最新の研究
幻覚キノコとして知られるマジックマッシュルームに含まれる成分の「シロシビン」が、うつ病の治療に有効である可能性を示す新たな研究が8月21日に発表された。この研究は、幻覚剤(サイケデリックス)が精神医学に役立つことを裏づける最新の証拠となる。 医学ジャーナルのBMJに発表された査読付きの研究論文によると、高用量のシロシビンは、広く用いられている抗うつ薬の「エスシタロプラム」と類似した効果をうつ病患者に与えるという。レクサプロやシプラレックスのブランド名で販売されるエスシタロプラムは、うつ病やその他の精神的症状を治療するために広く使用されている薬剤の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に属し、米国で最も処方されている薬の1つだ。 シロシビンのような幻覚剤を精神的問題の治療に使用することを支持する証拠、「しばしば欠陥があり、一貫性に欠け、効果の大きさが小さい」とこの論文の研究者たちは主張しており、これらの薬剤がうつ病の症状を治療する能力をより正確に理解するために、20回の試験で3000人近くのデータをレビューし、分析した。 これらの研究には、約800人が参加した幻覚剤に関する15のトライアルと、約2000人が参加したエスシタロプラムに関する5つのトライアルが含まれており、いくつかの試験ではシロシビンとエスシタロプラムを直接比較し、これらの薬剤がうつ病の症状にどのような影響を与えたかをプラセボとの比較で測定した。 研究チームは、幻覚剤の試験では、ほとんどの幻覚剤がプラセボよりも優れていたが、シロシビンとエスシタロプラムを比較した試験では、高用量のシロシビンのみがプラセボよりもわずかに優れた効果を示すことを確認した。 シロシビンの効果は「抗うつ薬と同程度である」と研究者たちは述べ、高用量のシロシビンが「うつ病の症状を改善する可能性がある」と結論づけた。 ■幻覚剤が直面する課題 幻覚剤は、ここ数十年の研究者やバイオテクノロジー企業、製薬会社の努力の結果、主流の臨床治療にこれまでになく近づいているが、臨床試験以外で使用する前に克服しなければならない重要な課題が存在する。 気分や思考、知覚を変えることができる薬物である幻覚剤には、LSDやシロシビン、ケタミン、MDMAなどが含まれる。幻覚剤は世界の多くの地域で違法薬物に指定されており、科学者たちがそれらの効果を調査するための努力を複雑にし、企業がそれらを市場に導入しようとする際にクリアしなければならないハードルを高めている。 うつ病やPTSD、双極性障害を含む多くの精神的症状は、治療が困難で専門家は新薬の開発が「遅々として進まない」と述べているが、新たな治療法の切実なニーズがある。幻覚剤はこの症状の改善に役立つ可能性があるが、通常の臨床試験では評価が難しい場合が多い。 ■MDMAを用いた心理療法も 米国のライコス・セラピューティクスは、MDMAと心理療法を組み合わせてPTSDを治療するための新薬を申請したが、米食品医薬品局(FDA)は先日、この申請を却下し、多くの人々を失望させた。FDAは治療の安全性と有効性を証明するために、さらなる追加の試験を要求したが、これには数年を要する可能性があり、ライコスは、FDAにこの決定を再考するよう求める計画だと述べている。 ライコスは、同社の治療法が、PTSDに苦しむ約1300万人の米国人を救う可能性があると述べている。PTSDは、特に女性や社会的に不利な立場にあるグループ、軍人や退役軍人に影響を及ぼしているとされている。
Robert Hart