<3度目の挑戦者・京都国際センバツへ>/上 大きかった3年生の存在 /京都
「2年生がチームに多く残るが、それだけで勝てるほど甘くはない」。京都国際が夏の甲子園準決勝で敗れた2021年8月、秋から発足する新チームについて問われた小牧憲継監督は断言した。ナインはこの言葉の意味をその後、知ることになる。 京都国際は21年春のセンバツで、創部22年目にして春夏通じて初めて甲子園に出場。記念すべき甲子園初勝利を挙げると、同年夏の甲子園では優勝経験校をも打ち破って4強に上り詰めるなど「学校の歴史を切り開いた」(小牧監督)。同年秋からの新チームでも、主戦・森下瑠大(りゅうだい)投手(2年)や主将を務める辻井心(じん)捕手(2年)をはじめ、聖地での2度の戦いを主力として経験した2年生が多く残っていた。 ただ、冒頭の小牧監督の言葉通り、新たな船出は順風満帆とはいえない状況が続いた。同年10月の秋季府大会決勝は、終盤に一時は勝ち越しを許すなど薄氷を踏み、5―4で辛勝。続く近畿大会も2回戦で、甲子園出場経験の無かった和歌山東に2―3で敗れた。再三の好機を生かせなかった試合展開に「甲子園経験メンバーが弱さを見せてしまった」と、辻井主将も新チームの未熟さを痛感した。 夏4強入りの実績を挙げた選手たちが、なぜ実力を発揮することができなかったのか。 その理由を、小牧監督は「これまで2年生は、3年生に力を引き出してもらっていた。3年生がいなくなり、精神面での弱さが露呈した」と分析する。3年生を中心とした「『ベンチからあいつの一声があったから打てた』というような無形の力」のおかげで、昨夏は「1足す1を10や100にするような、方程式にとらわれない力」が生み出されていたとみるからだ。 その象徴ともいえるのが、昨夏の甲子園まで捕手を務め、21年のプロ野球ドラフト会議で阪神から7位指名された中川勇斗(はやと)選手(3年)。攻守ともチームの要を担い、小牧監督も「昨年は中川のチームだった」と評するほどの存在感をナインに与えていた。試合に出られない時でもベンチから激励を飛ばし、ナインを支え続けた山口吟太(ぎんた)前主将(3年)もしかりだ。 そのことが痛いほど分かったからこそ、ナインは前を向き始めている。「昨秋は個々の能力だけで戦おうとしていた。チームで束になって戦うという意識が足りなかった」。中川選手から捕手の座を継いだ辻井主将が語る。「近畿大会は森下の投球に頼りすぎた。エースが打たれても野手や打者がカバーできるよう、この冬はチーム力を鍛え直す」と決意し、ミーティングを毎日4、5回開いてチームの課題や目標を腹蔵なく話し合うことで、団結力を高めている。 「昨秋は『自分たちは強い』という油断に負けた。3度目となる甲子園は、チャレンジャーの気持ちをしっかり持って臨みたい」と辻井主将。初の甲子園出場から、全国の大舞台を一気に駆け上がってきた京都国際ナイン。本気で頂を目指したいからこそ、3度目の挑戦者たり続ける。 ◇ ◇ 22年3月開幕のセンバツに京都国際が出場する。「挑戦者」として3回目の甲子園に臨むチームの姿を描く。【千金良航太郎】 〔京都版〕