「妊娠、出産を経て、人生、時間がとても貴重なものに感じる」東レPPO会場に登場した大坂なおみ
「妊娠、出産を経て、人生、時間がとても貴重なものに感じる」東レPPO会場に登場した大坂なおみ
10月20日、大阪なおみ(フリー)が「東レ パン・パシフィック・オープンテニス」(WTA500/東京都江東区・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/本戦10月21~27日/賞金総額92万2573ドル/ハードコート)の予選が行われている有明コロシアムに駆け付けた。 スタンドにサインボールを打ち込む大坂なおみ 会場でヨネックスのイベント『YONEX Tennis Festival 2024』の最後に登場し、サインボールをスタンドのファンに向けて打ち込むなど、ファンサービスを行った。 イベントの直前、取材に応じた大坂は、まず今シーズンを振り返った。 「今シーズンはもちろん、最高の出来ではなかったけど、多くのことを学び、大きく成長することができた。(9月26日から開催されていた)チャイナ・オープンまでは自分の進むべき道を模索中だったけど、いまはようやく道が開けた! 以前よりも少しだけ、コート上で笑顔でいられていると思う。東レ パン・パシフィック・オープンテニスは大好きな大会で良い思い出もたくさんあるから、今回怪我のためにプレーできないのはとても悲しい」 新コーチに迎えたばかりで、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチを務めた経験もあるパトリック・ムラトグルー(フランス)との関係はとても良好なようだ。 「北京(チャイナ・オープン)からパトリックと一緒に仕事をする中で、自分の成長を実感できているので、今後も成長を続けたい。彼が推奨する、ミスを恐れないアグレッシブなテニスは自分に合っていると思う」 欠場の原因は腹部の怪我だと説明した。 「北京で腰に痛みを感じて、MRI検査を行なったら、少し痛めていた。その後に腰が治り、この大会に向けてロサンゼルスで練習していたときだった。ラリーで打ち合っているときは問題がなかったけど、サービスの練習で腹部を痛めてしまった。再度MRIを撮ると筋肉の損傷が見つかり、それが原因で欠場することになった」 “成長したい”、“テニスが上手くなりたい”という気持ちが自分を突き動かす原動力になっているという。 「私のモティベーションは、テニスがうまくなること。まだまだ伸びしろはいくらでもある。周囲には才能に恵まれていると言われるけど、自分では一度もそう思ったことはない。とにかく努力して、できる限り完成された選手に近づきたい」 来年の目標を語った。 「まずトップ30入り、そしてグランドスラムのシード権獲得を目指していく。どちらも、今年も目指していたけど、残念ながら怪我もあって達成できなかった。ほかにはクレーコート、ハードコートの大会で優勝すること。グラスコートでもいいプレーをする自信があるけど、正直に言ってまだ少し怖さがあるの」 子供を産んだことで人生観が大きく変わったという。 「子供が出来てから私の人生は間違いなく大きく変わった。精神的に物凄く強くなったと思う。以前のように、周囲の雑音に惑わされることが少なくなった。テニスは自分が大好きなものだけど、人生のすべてではないことにも気づいた。今は家に帰ると、私を待っていてくれる娘がいる。まだ幼い彼女にとって、いまは私が世界のすべてだと思う。自分がしっかり守らなければいけない存在なの。若いころは時間が無限にあるように感じられた。オンコート、オフコートで好きなことをする時間がいくらでもあった。でも、妊娠から出産までの過程を経験したことで、今は人生、時間がとても貴重なものだと感じられる」 初めて娘と一緒に帰国した。 「娘と日本に来たことはすごく特別なことで、彼女を祖父母に会わせることができた。彼女に会って、みんなが泣き出してしまい、すごく特別なことなのだなと実感した。彼らがいなければ、私もここにいないし、娘も存在しない。すごく意味のあることだった。娘を東京ディズニーランドとサンリオピューロランドに連れていきたい」 プロ入り前から長く愛用しているヨネックスのラケットは、デザイン性がとても気に入っており、そのサポートに感謝している。 「ヨネックスは自分にとって最高のパートナー。すごくラケットのことをケアしてくれている。自分も一緒にデザインしたこともあり、デザイン性も気に入っている。姉のまりと一緒にデザインした龍が描かれている『OSAKA EZONE』は素晴らしいし、村上隆さんと一緒に作った桜が描かれたモデルもすごく気に入っているの。ヨネックスとの関係では、自分が何一つ犠牲にすることなく、完ぺきにサポートしてもらっている」 最後に、この日行われたエキジビションマッチを観戦した感想を語った。 「ジュニア選手たちがトップ選手と打ち合うことができるのは、彼女たちの夢が近づく素晴らしいイベント。この経験によって、トップレベルに近づく大きな一歩になるはず。しかも、有明のセンターコートは世界でも有数の大きさで、ここでプレーするのは私も誇りに感じる場所だから、ジュニア選手にとって本当に素晴らしい体験になると思う」 娘と充実した時間を過ごしながら、ムラトグルーとのタッグでテニスも良い方向に向かい始めたという大坂の、今後の活躍に期待が高まる。
テニスマガジン編集部