アジアで目立った動きがない日本&欧州メーカーの「EV商用車」! 中・韓の動きを「静観」して見えるのは嵐の前の静けさか?
インドネシアのモーターショーは商用車も見どころ
GIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)では、乗用車のほか、商用車や用品展示ブースも用意されている。筆者がインドネシアのGIIASやIIMS(インドネシア国際モーターショー)といった代表的な自動車ショーの取材をはじめたのは12年前ぐらいのこと。いまでもインドネシアで9割超の販売シェアをもつ日本車であるが、当時は限りなく100%に近いほどの販売シェアを誇っていた。 【写真】やっぱりこの分野では最先端? ヒョンデの電動路線バスとは 当然、ショー会場では出展メーカーのメインは日本メーカー、というよりはほぼ日本メーカーに限られ、それに欧州のほか、韓国などアジア系メーカーがパラパラとブースを構えているぐらいであった。 乗用車だけでは会場もスカスカなイメージになってしまうので、各商用車メーカーも十分すぎる広さの展示ブースを構えており、商用車も大好きな筆者は、取材を終えると商用車ブースに張り付いていた。 商用車ブースといってもトラックばかりではない。インドネシアの商用車マーケットの特徴としては、バスの架装というのが盛んに行われているのである。たとえば、日野や三菱ふそう、いすゞといった日系商用車メーカーの展示ブースにバスが展示されていても、日系商用車メーカーが販売しているのはバスシャシーのみであり、ボディ架装は地元インドネシアの会社が行うことになるので、「三菱ふそう製シャシーを●●がボディ架装した車両」として展示しているのである。 あるとき、某日系商用車メーカーブースへ行くと、ボディを架装してないバスシャシーのみが展示されており、かなり違和感を放っていたのをいまも覚えている。 シャシー提供メーカーだけではなく、ボディ架装会社も独自にブースを構えている。興味深いのは、同じような見た目のボディであっても、日系のほか、ドイツ・ダイムラーやスウェーデンのボルボやスカニアといったシャシーの異なる車両が展示してあったりすることもある。筆者から見ると、どれも同じように見える車両であっても、フロントに各シャシーメーカーのエンブレムが貼ってあるので、ひと目でどこのシャシーを使ったバスなのかがわかる。 GIIAS2024会場内のバス架装会社の展示エリアにある「LAKSANA(ラクサナ)」ブースには、韓国ヒョンデのBEV BUSシャシーを使った中型路線バス「E-UCLEUS」が展示してあった。シャシーについては、ヒョンデのマイクロバス「カウンティ」のBEV版となる「カウンティ・エレクトリック」のものがベースになっているのではないかと地元メディアは報じていた。 ヒョンデはすでに2024年5月にインドネシアで開催された、バス専門の展示会となる「バスワールド2024」に、ラクサナの大型路線バス「シティライン3」というモデルへ大型BEV路線バスシャシーを提供した車両を展示しており、インドネシアでのBEVバスシャシー提供元として存在感を示してきている。 インドネシアではすでに複数の中国系メーカーのBEV路線バスがジャカルタ市内などで営業運行しているが、調べた限りでは中国から完成車を輸入しているようである。ヒョンデがいち早く、地元ボディ架装会社へBEVバスシャシーを提供していたのを知って筆者は驚いてしまった。 一般乗用車は別として、大気汚染問題や原油輸入量を抑えたいと考える新興国では、バスやタクシーといった公共交通機関車両のフル電動化は、国によってスピード感の違いはあるものの、避けては通れない動きとなっている。 ICE(内燃機関)シャシーの供給では定評のある日系商用車メーカー。日系だけではなく、欧州系メーカーもBEVシャシーという面では目立った動きは見せていない。日本や欧米勢の静観にも見えるいまの状況は新たなフェーズへ動きだす、「嵐の前の静けさ」なのだろうか。
小林敦志