「空中の歩道」超便利! 高架鉄道の下を歩道にして「下りなくていい」街に なぜ日本じゃできないのか
「銀座の地下道」的な高架歩道エリア
2024年現在、このスカイウォークがもっとも活躍しているのが、商業の中心地で、東京に例えると銀座にあたる、サイアム地区です。 ここには約2kmの間に東から「チットロム駅」「サイアム駅」「ナショナルスタジアム駅」の3つの駅が並んでいます。 この区間を結ぶスカイウォークは、チットロム駅からサイアム駅までがとくに「Rウォーク」と名付けられ、「ゲイソンアマリン」「ゲイソンセンター」「セントラルワールド」など大型の商業ビルに直結しています。 サイアム駅でスカイウォークはいったん消滅しますが、歩行者は商業ビル「サイアムパラゴン」に入り、さらに「サイアムセンター」「ディスカバリーセンター」という連絡通路で結ばれた各商業ビルを通り抜けて西に進むことができます。 そしてディスカバリーセンターからはパトゥムワン交差点を覆うような巨大なX字型のスカイウォークが整備され、商業ビル「MBKセンター」と連絡しつつ、スカイトレインの高架下をナショナルスタジアム駅まで到達します。
次々と「連結」 通勤にもなくてはならない通路!
このサイアム地区のスカイウォークは、朝夕は通勤客が多く利用し、日中は買い物客や海外からの観光客で賑わいます。もしスカイウォークがなければ、これだけの人数を受け入れる地上の歩道はひどい混雑に見舞われていたはずです。 さらにパトゥムワン交差点上のスカイウォークは“映えスポット”として、国外の観光客をも集める名所になっています。 一方、観光客が多く滞在するスクンビット地区では、「アソーク駅」から西に延びるスカイウォークにより、各ホテルへのアクセスが大きく向上、さらにスカイウォークと連結する新築オフィスビルが多数誕生しました。またアソーク駅東側はバンコク有数の巨大交差点「アソーク交差点」を空中で渡れるようになり、連結するオフィスビルへの移動時間は、従来の地下鉄のコンコース経由・長い信号待ちが必要な地上の横断に比べ3-5分ほど短縮しました。 同じくスクンビット地区で、アソーク駅の隣のプロンポン駅も、当初は商業ビル「エンポリアム」のみと連絡していましたが、現在は周辺の大規模な再開発で生まれた大規模なモール「エムクォーティエ」「エムスフィア」などと連結を拡大しています。 日本においては、都市部の鉄道が地下鉄を中心に整備されていることもあり、こうした高架の橋脚を利用した歩道の設置はほとんど行われていません。またバンコクで実現したビルの大がかりな改装をともなうような開発は、利害関係の調整も難航しそうです。 しかしバンコクでの成功例を目にするにあたり、たとえば「ゆりかもめ」や「日暮里・舎人ライナー」、さらに今後も延伸予定のある「多摩都市モノレール」の一部など、導入できれば街の活性化につながるところも多いのではないでしょうか。
植村祐介(ライター&プランナー)