認知症の母が夕方になるとソワソワする理由と対策|夕食の準備をしようとする母、そして息子の想い
認知症の母が暮らす岩手・盛岡と東京の自宅を行き来し、遠距離介護をしている作家でブロガーの工藤広伸さん。住み慣れた自宅で暮らしたいと願う母のために、見守りカメラなどのアイテムを駆使してケアを続ける中で、最近気になるのが、夕方の母の行動だという。認知症介護の知恵や工夫を教えてもらった。 【画像】認知症の母が夕方、テーブルに並べた食器の数々。夕方のソワソワへの対策に活用しているホワイトボード
認知症の母が夕方になると落ち着きがなくなる
認知症の人が昼間は落ち着いていたのに、夕方から夜にかけて急に落ち着きがなくなったり、不安を訴えたりする状態を夕暮れ症候群といいます。 母の介護が始まった12年前に読んだ本で夕暮れ症候群を知ったのですが、最近の母の言動は、ひょっとすると夕暮れ症候群かもしれないと思うようになったのです。 母は午前中よりも夕方の時間帯のほうがソワソワして、落ち着きがありません。 例えばデイサービスは朝に行くのですが、突然夕方に化粧を始めて、外出用の上着を着て、玄関先や車庫の中にあるベンチに座って、来るはずのないデイサービスの送迎車を待つのです。 そのため、夕方は特に母の見守りを強化していて、見守りカメラで母を見る回数を増やして対策しているほか、必要に応じて見守りカメラを通じた声掛けを行っています。母が玄関先をウロウロし始めたら、 と声を掛けて、デイサービスの迎えが来る時間帯ではないことを何度か伝えると落ち着きます。他にも夕暮れ症候群と思われる母の行動があって、こちらのほうは親子ゲンカの火種になっています。
夕食の準備をしようとする母
母は何十年にもわたって、家族の夕食の準備をしてきました。その習慣が認知症になった今もしっかり記憶として残っているので、自分が夕食の準備をしなければならないと思っています。 認知症と診断されたあとも、しばらくは母が夕食を作っていました。たまに味のないもやし炒めや、味付けを間違えた肉じゃがが出てきましたが、何とか食べられるものでした。 しかし最近は、母に夕食の手伝いをお願いするとどうしていいか分からないようで、すべての手順を説明しないといけなくなってしまったため、わたしが料理を担当するようになり、結果として母の役割は皿洗いのみになってしまいました。 でもこれまでの習慣が抜けないからなのか、母からこう質問されます。 母「今日は何が食べたいの?」 わたし「今は俺が買い物に行って、俺が作ったものを食べているでしょ!」 思いはよく分かるのですが、母は買い物に行ってないし、冷蔵庫にある食材が何かを把握していません。ましてや料理の手順も分からないのに、同じ質問を毎日繰り返すので、わたしはつい事実を伝えてしまって、親子ゲンカに発展します。 母「何言ってるの!わたしがいつも冷蔵庫の残り物で、チャチャッと作ってあげてるでしょ!」 確かに以前の母は、冷蔵庫にある残り物でおいしい料理をチャチャッと作れる人でした。本当は母の質問に対して、「カレーライスが食べたい」などと答えたほうが、母も納得するし親子ゲンカにならないのかもしれません。 しかしそのように答えてしまうと、母は本当に台所へ行って夕食の準備を始めてしまいます。強い思いを持った母はついに、こんな行動をとるようになったのです。