行列のきっかけは人気ドラマ? オムライス人気の洋食専門店、82歳シェフが閉店を決めた理由は…
人気の洋食店が多い神戸で、特にランチ時は行列が絶えなかった「洋食L’Ami(以下、ラミ)が、今年11月30日に閉店する」と発表。「なぜ?」「もう食べられないなんて」と神戸っ子のみならず、遠方の人からも惜しむ声が続出しています。 【写真】ドラマがきっかけで人気になったオムライス 洋食の街・神戸に2000年にオープンし、24年間愛され続けてきた「ラミ」。神戸が好きで、洋食が大好きだという店主・土井平八さんは、当時の日本調理師学校の2期生として卒業した後に「旧オリエンタルホテル」に就職して研鑽を積みました。「コックとして料理に向き合い、その後は洋食店のマネージャーの経験などを通じて経営や接客なども学ばせていただきました。料理は、食べてもらえる人がいるから作ることができるんですよね。では、どうすればまた食べてもらいたいという気持ちになっていただくか…その気持ちを大事に続けてきました」。 ■行列のきっかけは、人気ドラマ? 独立して現在のラミをオープンする際に決めたのは、お客様の顔を見ながら調理できるようにL字型のカウンターが厨房を囲むスタイル。周辺の洋食店としても珍しく、オープンキッチンの活気が伝わりつつも、会話も楽しめる洋食店として人気店へと成長していきました。 「ただ、創業当初から人気店だったわけではなくて…」と振りかえる土井さん。大きなきっかけとなったのは、2002年放映のテレビドラマ『ランチの女王』だったそう。このドラマ内では、外はふわふわ中はとろとろに仕上げたオムレツの中央を、ナイフでカットして広げるオムライスのシーンが登場するのですが、まさにラミのオムライスはこのスタイルだったんです。「オープンして暇だったので、時間がかかるこのタイプのオムライスを提供していたんです。ドラマに出てくるようなオムライスを食べてみたいと、お客さまの口コミでどんどんと広がっていきました。ドラマよりも前から、作り続けていたおかげです(笑)」と土井さん。 その後、世の中のB級グルメブームも追い風となり、あまりにの忙しさにふわふわのオムライスは夜限定へと変更し、ランチタイムは薄焼き卵を包むオムライスに。それでも人気に変化がなかったのは、きっとオムライスにかける、秘伝のデミグラスソースも理由の一つでしょう。グレイビーボートでサーブされ、しっかりとコクや深みを感じる味わいながら、後口がすっきり。ケチャップで味付けされたライスと薄焼き卵とも好相性です。 そして、オムライスと並んで、絶大的な人気を誇ったのが「カニクリームコロッケ」。バターと小麦粉を1時間かけて炒め、牛乳を加えつつ、ゆっくりじっくり作るベシャメルソースに、兵庫県香住町から届くベニズワイガニを混ぜ合わせて。甘みと旨みが凝縮されたこの一品に、土井さん自身も「自信作!」と胸を張ります。 そんなメニューの数々も楽しめるのは11月30日までとは…その閉店理由について、「物件との契約のこともあるのですが、自分の体のことを考えてです。実は昨年は、入院して療養していた時期もあり、その後はディナー営業のみとしていました。私ももう82歳ですので、エネルギーがある今のうちに会社をたたむことにして、これからは体を優先して生き延びてやっていこうと思っています」と笑顔で語ってくれました。 インスタグラムと店頭の貼り紙で閉店を告知をしたところ、さまざまな惜しむ声とともに、アメリカ在住の方から「閉店までに一度帰国して、並びます!」というメッセージも。この取材をしている短い間だけでも、店頭の貼り紙を見て立ちすくむ20代のOLや店内をのぞき込む30代の男性2人連れなど、さまざまな年代が閉店を惜しんでいる姿がありました。その様子を見ているといかに愛されていたかが伝わってきます。 ちなみに、ラミといえば巨大な2体のスヌーピーのぬいぐるみが目印ですが、これには思わぬ裏話が。近所にあったお店が引っ越す際に、自宅のスヌーピーを引き取って欲しいという依頼があり、断ったものの翌日には店頭に鎮座。もう1体は知り合いのお店に届けられていたそうですが、「2体が離ればなれはかわいそう」という理由でラミのもとへ。すると、お客さまからの好意でスヌーピーグッズがプレゼントされ、店内のあちこちに飾られるようになったのです。現時点で、2体の看板スヌーピーは巨大すぎて洗うのも難しいため、行き先が決まっておらず、これが現在の心配ごとのひとつとのことでした。 電話予約は11月10日までの予約は終了しており、11月13日以降は予約は受け付けず直接来店してもらうスタイルで営業。営業時間はディナータイムのみで16時45分~20時30分ラストオーダー(食材が無くなり次第終了)、11月30日までの営業日はインスタグラム(@lami_kobe)で確認を。 取材・文・写真/いなだみほ