米金利高止まり、いつまで続くか-債券市場は恒久的とのサイン発信
(ブルームバーグ): 米国債相場の本格的上昇への楽観ムードが投資家の間に広がる状況にあって、参入を検討している人々にとって市場の重要な指標の一つが憂慮すべきサインを発している。
最初に朗報を挙げると、今年も折り返し地点に近づき、インフレ率と労働市場が実際に落ち着きつつあることを示す兆候がようやく顕在化し、米国債相場は今年の損失解消にあとわずかとなっている。トレーダーは物価や労働市場の動向について、米金融当局が9月にも利下げを開始するのに十分である可能性があると現時点でみている。
しかし一方で、経済成長の加速も減速も招かない理論上の金利水準である中立金利が、米金融当局者の現行の予測よりも一段と高い水準にあるのではないかとの見方が市場で広がっている。この結果、当局は利下げしようにもできず、債券相場の逆風となる可能性がある。
SMBC日興セキュリティーズ・アメリカの米国担当シニアエコノミスト、トロイ・ルドゥカ氏は「重要なのは、景気が先行き必然的に減速した場合、利下げは少なめで、金利は今後10年程度にわたり、過去10年よりも高くなる可能性があるという点だ」と指摘した。
米金利がどこに落ち着くかについて、市場の見解を反映する5年先5年物フォワードレートは3.6%程度で落ち着いている。昨年のピークである4.5%から低下したものの、過去10年間の平均を丸々1ポイント余り上回り、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局者の長期的な推計である2.75%よりも高い。
これは、市場が利回りの下限について一段と高い水準を盛り込んでいることを示すため、重要な意味を持つ。実際的には、米国債相場の潜在的な上値が抑えられることになる。昨年終盤に救済をもたらしたような相場の大幅上昇を期待している投資家には懸念材料の一つとなるだろう。
今のところ投資家のムードはますます上向いている。米国債のリターンを示すブルームバーグの指標は4月に一時、年初来でマイナス3.4%まで低迷したが、21日時点はマイナス0.3%に持ち直している。また、指標の利回りは同月に付けた年初来ピークから0.5ポイント近く下げている。