エンケラドゥスに熱水噴出孔が存在する可能性 実験室でのシミュレーション結果が示唆
Khawaja氏たちはベルリン自由大学の研究室で、エンケラドゥスの熱水域と同様の条件と考えられるパラメータを設定しシミュレーションしました。 試験装置内の設定温度は80~150℃、設定圧力は80~100バールで、地球表面のおよそ100倍に相当します。Khawaja氏たちは、私たちが知るすべての生命の基盤となっているタンパク質の構成要素であるアミノ酸について、これらの条件からどのような影響を受けるのかを調べました。 実験の前後にアミノ酸鎖の変化を測定したところ、アミノ酸鎖は過酷な状況下で時間の経過とともに特徴的な変化を遂げました。Khawaja氏は「その過程で、私たちがシミュレーションした熱水域での反応によって引き起こされたと考えられる特徴的なシグナルを捉えました」と説明しています。 LILBIDによって捉えられたアミノ酸鎖の特徴的な変化は、実験装置内に再現された熱水域における熱水活動によって引き起こされたと考えられます。このデータをカッシーニが取得したデータと比較したところ、エンケラドゥスに熱水噴出孔が存在する可能性が示唆されたのです。 今回の発見により、カッシーニのデータ (または将来のミッションのデータ) を用いて熱水域での反応と考えられる指標(マーカー)を検索することが可能になりました。今後、研究者たちはエンケラドゥスの内部海の詳細な地球物理学的条件を用いて、他の有機分子でも実験を繰り返す予定です。 そのようなマーカーがさらに発見されれば、エンケラドゥスに熱水域が存在するというさらなる証拠となります。そのことは、エンケラドゥスで生命が誕生し、生存できる可能性が高まることを意味するはずです。 本研究はベルリン自由大学で行われ、ワシントン大学およびシュトゥットガルト大学の科学者も参加しました。 Source University of Stuttgart – Discovery of biomarkers in space Kawaya et al. – Laboratory characterization of hydrothermally processed oligopeptides in ice grains emitted by Enceladus and Europa (Philosophical Transactions of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences)
吉田哲郎 / sorae編集部