小川麻斗「ジョンさんが求めているのは…」千葉J圧勝劇で示した飛躍の兆し
3月16日、さいたまスーパーアリーナで行われた「第99回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」決勝は、千葉ジェッツが117-69でライバルの琉球ゴールデンキングス相手に歴史的圧勝劇で天皇杯2連覇、通算5度目の優勝を果たした。 Bリーグを代表するビッグチーム同士の頂上決戦ゆえ、48点差をつけての千葉Jの「爆勝」を予想した者はほぼ皆無だっただろう。「(試合の)どこをどうしていれば(違う結果になった)、というレベルの話ではなかった」と琉球のエース、岸本隆一が諦観するほど千葉Jのバスケットボールは攻守両面で非の打ちどころがない領域で展開されていた。 その要因は、MVPに輝いた富樫勇樹の力だけではない。富樫がシーズンを通して求め続けきたチーム全員によるバスケットボールを、ほぼ100パーセント実践できたからにほかならない。 そしてその象徴的な存在のひとりとして挙げられるのが22歳のポイントガード、小川麻斗だった。
■ 会見で思わず出た言葉
ついに、吹っ切れたのかもしれない。ワンサイドの展開になったとはいえ、この試合、小川はBリーグの公式戦含めて今シーズン自身最多の6本の3ポイントを放ち、富樫に次ぐ4本成功、計14得点をマークした。 印象的だったのは、第3クォーター最後の攻撃。すでに勝敗は決していたが、コート上にいる千葉Jの5人は自分の役割に徹し続けるなか、左コーナーで待機していた小川は、西村文男からのパスを受けると、迷うことなく3ポイントを放つ。ボールがネットを抜けたのを確認すると雄叫びをあげて喜びを爆発させた。 会見で優勝の喜びについて感想を求められた小川は、思わず「大学(のバスケ部)を辞めて、良かったぁ」と発した。同席したチームメイトも思わず吹き出したが、本人の意図は日体大が嫌だったわけではもちろんない(むしろ貴重な時間だった)。その言葉は、プロ選手としてジェッツと契約してからの約1年間、抱き続けてきた葛藤、その反動の大きさの表れではないだろうか。