小川麻斗「ジョンさんが求めているのは…」千葉J圧勝劇で示した飛躍の兆し
■ 「僕がアメリカで体感したことでもあるし…」
大黒柱の富樫は、シーズンを通して「若手の台頭」をチームがステップアップするためのポイントとして挙げ続けてきたが、それは、主に小川と20歳の金近廉のふたりに向けたメッセージでもあった。 シーズン序盤、千葉JはBリーグ公式戦のみならず、並行して東アジアスーパーリーグ(EASL)が組み込まれる過密日程のなか、主力の戦線離脱に加え、若手の台頭が思うように進まず苦戦が続いていた。そのころ、富樫はプロとして、ふたりへの強い要求を会見の場で口にしていたことがあった。 「僕が海外でプレーした経験も含めて思うのは、やっぱり信頼という部分。僕がパスを出すのはその選手に対して信頼がないと出せないわけで、単にノーマークだからパスを出すということではない。それは僕がアメリカで体感したことでもあるし、(小川)麻斗にしても(金近)廉にしても、そういう信頼を(自分に)見せられるようにしなければ」 それは2024年に入り、チーム状態が良化し始めてからも続いてきた。 小川自身が富樫との直接的なやり取りを明かしたわけではないが、同様のことをジョン・パトリックヘッドコーチから求められ、試行錯誤しながら答えを探し求めてきた。リーグ戦とトーナメント戦の天皇杯の違いはあるものの、琉球に敗れた昨シーズンのBリーグファイナル2試合では9本のシュートを1本も決められず、無得点に終わった悔しさも忘れてはいなかった。天皇杯の決勝、小川は自らのパフォーマンスで本当の意味での自信をつかんでみせたのである。 「(シーズンの)最初の方は、勇樹さんを見たりパスの意識が強かったんですけど、自分から得点を取りに行くことを意識してプレーするようにしてきました。ジョンさんが求めているのは、ディフェンスとリングへアタックすること。守備では相手の嫌がること、攻撃ならリングに向かう姿勢、ノーマークなら打っていく。それができればプレータイムが増えることがわかった。この1年間、シュートが決まらず、メンタル的に消極的なシュートになったこともありましたけど、シューティングもたくさんやってきたし、こうやって天皇杯で決めきれたので良かったです」 もともとは得点力を備えている選手。チームの柱は日本トップのポイントガード。その選手が「打て」と言うなら打てばいい――そんな気持ちがさらに芽生えてくれば、小川はまた一つ上のステージで、新たな自分を見出せるはずだ。 取材・文=牧野豊
BASKETBALL KING