Amazonがヤマトの“契約切り”を好機と捉える理由「人手が足りない業界」で独自流通網を構築中
「大手荷主中心の体制」から転換を図りたいセイノー
一方、セイノーは2024年3月期の営業利益が前期の3割減少していました。不特定多数の顧客の貨物を1台の車両で輸送する「特積み」の物量が減少。売上が伸び悩んで減益となったのです。 こうした状況下で、業界トップの日本郵便と手を組むメリットは大きいでしょう。 セイノーは大手荷主中心の体制から、中堅荷主までターゲットを広げようとしています。取扱量が増え、輸送の効率化が進むことにも期待ができます。
2万5000人の個人事業主との契約解除効果は150億円?
ビジネスモデルの大転換を図ろうとしているのがヤマト。成長領域に法人ビジネスの拡大を掲げています。 ヤマトは2024年1月末に、配達を委託していた個人事業主約2万5000人との契約を打ち切りました。日本郵便に一部配送を移管したことに伴うもの。ヤマトは2024年3月期に集配委託費として969億円もの費用を計上しています。 仮に業務委託料が1人当たり月5万円だったとして、12か月フル稼働していたとすると、2万5000人で150億円ほどが削減される計算です。 ヤマトの営業利益率は3%程度で、佐川急便のSGホールディングス6~7%と比較すると見劣りがします。小型の荷物からの脱却を図り、利益率向上に努めているのです。 なお、ヤマトも2024年5月に新会社を設立し、他の物流会社と共同で荷物の積み合わせを行うと発表しています。内包していた経営課題に2024年問題が加わって、配送効率を高める取り組みに余念がありません。
「軽自動車を持つ人」が配送事業者として独立できる時代に
個人事業主との関係を強化しているのが、アマゾンジャパン。実は2024年問題を見越して、国は輸送事業に関する規制緩和を行っていました。これまでは配送に特化した軽貨物車(軽バン)が必要でしたが、軽乗用車での輸送が可能となったのです。アマゾンは2023年10月に事業用ナンバープレートを取得した軽乗用車による商品配送を始めたと発表しました。それが「アマゾンフレックス」です。 公式ホームページによると、1時間の最大報酬額は軽貨物車で1886円、軽乗用車で1650円。積載量による差が生じているものの、大差はありません。軽バンは中古市場でも値段が下がりづらく、少なくとも60万円程度の投資が必要です。初期投資がなく、自家用車の黒ナンバー化で迅速に事業を始められることを考えれば、割のいい仕事だと言えるでしょう。 フードデリバリーは、都市部では変わらず人気を博しているものの郊外は下火。既存の配達員はポートフォリオの一つにアマゾンフレックスを取り入れることもできます。