地元の専門誌がレコメンド! バンコクを象徴する現代建築7選
人目を惹きつける、雄大で大胆な構造美
セントラルエンバシー 設計:AL_A 竣工:2017年 天へと伸びゆく、有機的なフォルム 6層のモールと40階建てのホテルというふたつの構成要素をシームレスにつないだ有機的なフォルム。ファサードのデザインは、タイの寺院の屋根のかたちをモチーフにしたもの。上から見ると無限マーク(∞)のような構成は、屋根から適切に陽光を取り入れるためのもの。外壁に施した30万枚のアルミパネルが建築のダイナミズムを強調するとともに、刻々と変化するバンコクの空と街の様子を映し出し、風景に自然と溶け込む効果を図っている。 アップル・セントラルワールド 設計:フォスター+パートナーズ 竣工:2020年 片持ち梁で実現した、ガラス張りの市民の広場 セントラルワールド広場南端にあるアップルストアは、直径25mほどの円筒形をした全面ガラス張りの2階建て。大きな木が人々を守るような空間は、中央の円柱から片持ち梁を出すことで、内部に大きな吹き抜けを実現したもの。BTSチットロム駅と直結する2階からアクセス可能で、中央の柱に沿うようにステンレス製の階段が上下階をつないでいる。床から大天井へと伸びるヨーロピアンホワイトオークとのコントラストもいいアクセントに。
ローズウッド・バンコク 設計:KPF 竣工:2018年 機能的な切り分けで、タイ式挨拶を表現 プルンチット駅前にある30階建ての5つ星ホテル。迫り出したテラスが連なる中央棟を、斜めに切り出したタワーが挟むそのかたちは、両手を合わせてお辞儀をするタイ式挨拶“ワイ”の姿を建築的に表したものだ。現代的な建築要素を守りつつ、来客に対する歓迎の意を構造で示している。両端の迫り出しは、客室と共用部を機能的に切り分けるとともに、隣接する建物からの視線を遮ることで、プールやレストラン、バーのプライバシーを確保する。 SACギャラリー 設計:A49 竣工:2012年 作品を守る岩壁の、天地を貫く大胆な亀裂 日本人街として有名なスクムビット地区にある、地上4階建ての現代美術ギャラリー。大切なものを表す「岩の中の卵のように」というタイの言い回しを建築的に表現。建屋中央の亀裂のモチーフが岩石を彷彿とさせながら、その開口から室内に明るい外光を取り込む機能性を付加している。また、この中央部は複数の展示室をつなぐ通路の役割も果たす。来館者が鑑賞の合間に窓の外を眺めつつ、ひと息つくスペースにもなっている。
写真:森山将人(P2、P4~6、TRIVAL) 編集&文:猪飼尚司