地元の専門誌がレコメンド! バンコクを象徴する現代建築7選
街の発展を象徴するかのように、高層ビルやデザイン性豊かな建築が林立するバンコク。この地ならではの特徴とそれらがつくられる背景を建築専門誌『art4d』のメンバーに訊いた。 【写真】記事の画像をすべて見る Pen最新号は『バンコク最新案内』。再開発が進み、新たな価値を創造するタイの首都・バンコク。本特集で
寺院や市場の間から個性的なハイタワーが顔をのぞくバンコク。チャオプラヤー川沿いには「ザ・サイアム・ホテル」や「カペラ・バンコク」など高級ホテルが集まり、プロムポン駅前には新しいモール「エムスフィア」が完成。郊外には高級コンドミニアムも続々登場するなど、再開発はとどまることを知らない。ビル・ベンスリーやオーレ・シェーレンといった著名建築家の設計も見られるバンコクの街並みを、タイ発の建築&デザイン誌『art4d』の編集者はどう見ているのか。 「バンコクの発展の様子は、他の国と比較しても、少し特殊な例かもしれません。日本ならば東京以外にも大阪や名古屋というように、首都とともに地方都市も着実に開発されるものですが、タイの場合、バンコクだけが別格。第2の都市、チェンマイに高層ビル群はなく、街としての機能にも雲泥の差があります。バンコクは政治経済だけでなく、文化的求心力がある。この事実こそが、再開発の原動力になっています」 さらに、バンコク建築の独創性には、行政的な理由も大きく関係していると続ける。 「この街には、政府や自治体が定める具体的な都市計画がありません。行政がしないなら、自分たちで環境をアレンジしようという気概であふれている。だからこそ、『キングパワー・マハナコーン』のようにギリギリの線を目指す大胆な建築も生まれるのでしょう」 そのクリエイティビティは、独自にカスタマイズされた屋台のデザインにも顕著に表れる。豊かなバリエーションは、多様に進化を遂げる街の縮図のようだ。 予測不可能な状況に随時対応していく適応性の高さや柔軟な姿勢があるとはいえ、モンスーン気候に生きる人々にとっては、年間を通じて高温多湿な環境の中で、快適に過ごす機能も重要だ。 「建物内に中空部をもたせつつ、意識的に日陰をつくったり、通風をよくしたりする建築も最近では多くなりました。これは環境への意識の高まりともいえます」 「ジム・トンプソン・アートセンター」は、その最たる例。今後、この街はどう成長していくのか。彼らは少し悩ましげに答える。 「日本のような整備された都市を目指すのであれば、大きな政治判断と行政による管理が必要です。でもそうすると、この街がもつ多様で寛容な感覚が失われてしまう可能性もあります。タイ人がよく口にする“マイペンライ(あまり考えすぎず、気にしない)”の精神で、バンコクは新旧が混在する“ビューティフルカオス(美しい混沌)”をたたえる街のままでいてほしいですね」 そう考える彼らとともに、バンコク建築の可能性を示す7つの施設を巡ってみた。