夏の甲子園、地方大会中止決定も3年生救済の地方独自大会開催は「各地方連盟の自主性に任せる」との矛盾…責任の所在は? 安倍首相vs地方知事の構図に重なる奇妙さ
新型コロナウイルスの感染拡大の情勢を受けて夏の甲子園大会が中止となった。日本高等学校野球連盟の運営委員会並びに理事会が20日に行われ、8月10日から甲子園球場で行われる予定だった第102回全国高等学校野球選手権大会の中止を決定した。6月下旬から全国約3800校、約15万人の球児が参加し、47都道府県(49地区)で開催予定だった地方大会も併せて中止になった。だが、一方で3年生の救済措置として地方都道府県高野連が進めている独自の地方大会の開催は「自主的な判断に任せて認める」という矛盾をはらんだ奇妙な姿勢も明らかにした。さっそく愛知県、和歌山県などが独自大会開催プランを表明、各チームの監督、選手らも歓迎の姿勢を示しているが、責任の所在も曖昧で、新型コロナの感染状況に応じて地域格差が生まれることが危惧されている。
緊急事態宣言解除地域も中止にした理由は?
高野連の八田英二会長は「苦渋の決断」「断腸の思い」と言葉を絞り出した。無観客に加え、甲子園練習、開会式などの行事を省き、できるだけ滞在期間を短くするプランなどギリギリまで開催が模索されたが、開催期間が2週間に及び、全国から選手、関係者が集まることによる移動、宿泊時の感染リスクを避けられないため「選手の安全、健康を第一」に夏の甲子園大会の中止が決定され、併せて地方大会の中止も決まった。 大会会長の渡辺雅隆・朝日新聞社代表取締役社長の説明によると、地方大会の中止理由はこうだ。 「地方は約3800校が参加、6月下旬から約250の球場で開催される。感染リスクを完全な形で抑え安全な運営をすることは極めて難しい。休校などで練習が十分でなく選手のケガが増えてくることも予想される。運営、審判らもボランティアで、様々な仕事に就かれていて十分に協力していただくことができない。医療スタッフの球場常駐も難しく、公的施設の制限で使用球場も限られる可能性も否定できない。夏休みの短縮など登校日、授業日が増え、学業の支障になりかねない」 加えて全国高等学校選手権大会は、全国の地方大会の1回戦から甲子園の決勝までのトーナメントで構成されており、都道府県でひとつでも開催のメドが立たねば、大会が成立しないという大会要項があるという。 39県では緊急事態宣言が解除され、大阪、兵庫、京都の近畿3県も解除される方向で、取り巻く環境に変化もあり、一部の都道府県の高野連からは、せめて地方大会だけでも開催を求める声が届いていたという。 それでも八田会長は、「第二波、第三波が来るのは確か。新型コロナウイルスの感染症が完全に終わる、収束するという見込みが立たないところで、いくら都道府県の解除が進んだとしても新型コロナとの戦いが長期的であることを念頭に置き、選手の安全、安心に重点を置くと開催の方向にという結論にはいかなかった」と説明した。 だが、その一方で、各都道府県の高野連から強い希望があがっている独自大会の開催については認めるという。センバツが中止となり準々決勝で途中打ち切りとなった沖縄を除き春季大会もすべて中止になっていて、3年生は公式戦を一度も経験できていない。彼らの救済措置のための動きだ。