夏の甲子園、地方大会中止決定も3年生救済の地方独自大会開催は「各地方連盟の自主性に任せる」との矛盾…責任の所在は? 安倍首相vs地方知事の構図に重なる奇妙さ
主催者の朝日新聞社・渡辺社長も、「それぞれの地方で、それぞれの感染状況を見て、これならできる、ということはあるという風に思う。やる、やらないについては、それぞれの各地区の高野連のご判断だが、全国大会を開催するにあたって、さまざまな感染対策も含めたガイドラインを考えてきた。各地区には、そのガイドラインに即した形でやっていただく、という意味で、いろんな相談に乗っていきたい。財政的なことに関しては、朝日新聞社として可能な限り支援できれば。なんとか(3年生に)最後のユニホームを着て活躍できる場をつくれないか、という思いは、みんなに共通している」と付け加えた。 日本高野連の方針には矛盾点が多いが、理解を示す声もある。 鋭い評論で知られる元ロッテの里崎智也氏は、「この高野連の姿勢は仕方がないと考えています。原則として地方大会の中止を決めたわけです。そこで独自大会に関する指針を示すとなると、逆に、その決断と矛盾することになります。高野連としては、早急に、来年のセンバツにつながる秋の地方大会をどうするかについて議論、準備を進める必要があり、地方の独自大会の開催可否について、それぞれ対応して可否を決めていく余裕はないでしょう。また地方によっては、やりたくともできないところも出てきます。各都道府県の独自判断に任せ、経済面も含めて最大限支援する姿勢を明らかにしているのですから、それ以上の対応は難しいのではないでしょうか」との意見。 すでに愛知、和歌山、静岡、岩手などが、次々と独自開催を検討することを表明した。だが、まだ緊急事態宣言解除の見通しが見えない首都圏や北海道などを含め、地方によって、開催ができる、できないの温度差がある。医療現場が逼迫している地域では、医師スタッフの球場への待機をどうするかなど、地方の独自開催にクリアすべき問題は残っている。まだ開催の行方は不透明だ。地域格差に、不公平感、不満の声が出る可能性も高く、高野連が地方大会を中止にした理由も、そこにある。 それでも、夏の甲子園への夢を絶たれたが、全国各チームの監督、選手からは、高校3年間の集大成となる独自大会開催を期待、熱望する声があがっている。 八田会長は、記者会見でこんなメッセージを残した。 「3年生は部活の集大成の場がなくなってしまう。モチベーションをなくし心が折れる思いかもしれない。でも球児の皆さんに、ひとこと添えたい。甲子園を目指した球児という栄冠は永遠に輝いている。自信と誇りを胸に新たなる一歩を踏み出してください。かつて一世を風靡したアメリカのプロテスト・ソングに『We shall overcome』(勝利を我等に)があった。新型コロナウイルスに人類が打ち勝つことを、そして皆さんが自らの心の揺らぎに打ち勝ち、明日に向かって挑戦されることを信じている」