【番記者の視点】ACL大敗を糧に…横浜FMの選手ミーティングで、喜田拓也と小池龍太が話したこと
◆明治安田J1リーグ▽第9節 横浜FM4―0柏(29日・日産スタジアム) 横浜FMは柏に4―0で大勝した。準優勝に終わったACL決勝第2戦(1●5)から27日に帰国し、柏戦に向けたトレーニングは1日だけしかできなかったが、それでも粘り強く戦い、勝ち点3を手にした。 * * * UAEからの帰国便機内は、重苦しい雰囲気だったという。この日ハットトリックを決めたアンデルソンロペスでさえ「まだ完全に切り替えられたわけではない」と試合後に語った。精神的ダメージを負う敗戦だった。 それでも帰国から約50時間後に、試合は待っていた。前日練習終了後、主将の喜田が動いた。選手だけでミーティングを行った。 喜田は「これから先のクラブだったり、戦いだったりに向けて、話した方がいいと判断した。前を向くために必要だと思った」と明かした。柏戦のあとは、中2日で2位の鹿島戦。中断期間を挟み、クラブが近年苦手とする天皇杯、首位の町田戦と続く。喜田には危機感があった。 アカデミー出身でマリノス一筋の喜田は言った。「普通のチームだったら、ここで右肩下がりに下がっていくかもしれない。でも自分が知っているこれまでのマリノスは違った」「マリノスはここで崩れるようなチームじゃない」「ここでもう1回、自分たちらしいサッカーをしよう」「前を向こう」。選手たちに語りかけた。 発言の機会は、負傷もあってUAE遠征に帯同しなかったDF小池龍太にもあった。小池の話した内容は、実体験に基づくものだった。 2018年、小池が所属していた柏は、ACLで1次リーグ敗退となった。柏は「柏から世界へ」をスローガンに掲げるなど、国際大会に高いモチベーションで臨むチームの1つとして知られる。 そんなクラブは、ACLの早期敗退で歯車が狂った。第12節終了時点ではリーグ7位だったが、そのまま徐々に順位を落とし、最終的にJ2降格。伊東純也、中村航輔、中山雄太らを擁し、アジア制覇を本気で狙っていたチームですら、1つ間違うと一大事になってしまう―。ある選手は「特にあの話は、みんなの心に響いたと思う」と振り返った。 * * * 試合後、喜田は「切り替えて、前を向いて、歯を食いしばって戦った、それに尽きる。まだ自分たちは死んでいないぞってところを見せられたと思う」とリスタートの一戦を振り返った。まず1勝、たかが1勝、されど1勝。マリノスの本当の見せ場はここからだ。(横浜FM担当・岡島 智哉)
報知新聞社