初参加の常照寺と宝筐院 7年ぶり鹿王院は舎利殿お披露目 2024年春の京都非公開文化財特別公開の見どころ
2024年春の京都非公開文化財特別公開(京都古文化保存協会など主催、朝日新聞社特別協力)が4月27日から6月16日の期間中、京都府内の寺社など15か所で開催されます(場所により開催期間は異なります)。同協会の後藤由美子事務局長に見どころを、2回にわたりうかがいました。後編では、初参加の常照寺(じょうしょうじ、京都市北区)と宝筐院(ほうきょういん、同市右京区)、7年ぶり参加の鹿王院(ろくおういん、同市右京区)をご紹介します。
◆常照寺〈初参加〉 マルチアーティスト本阿弥光悦の芸術村があった地 光悦が土地を寄進
常照寺は京都・洛北の鷹峯(たかがみね)にあり、鷹峯三山とよばれるなだらかな三つの山に臨んで、穏やかにたたずんでいます。2018年の台風で倒木やがけ崩れなどの大きな被害があり、本格復旧はまだこれからという状態なのだそうです。非公開文化財特別公開の拝観料は貴重な文化財の保存や修理に役立てられることから、今回、初参加することになりました。京都古文化保存協会の後藤事務局長は「微力ながらもお役に立てれば」と話します。 鷹峯は、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ、1558~1637)の芸術村があった所です。琳派の祖のひとりと言われる光悦は、「寛永の三筆」といわれる書家であり、漆や陶芸の工芸家であり、茶人であり、刀の目利きでもあり、いまでいうマルチアーティストでした。1615年、徳川家康から鷹峯の土地を拝領すると、一族や職人とともに移り住み、この地に芸術家が集まるようになりました。 光悦は日蓮宗の熱心な信徒でもありました。光悦が土地を寄進し、子どもの光瑳とともに、日乾(にちけん)上人を招いて、1627年に開創されたのが常照寺です。
◆鷹峯壇林 厳しい戒律の学問所でも知られ、多いときには300人が学ぶ
日乾上人は、僧侶の学問所である「鷹峯壇林(だんりん)」も、山城六壇林の一つとして創設しました。境内の数万坪の中に、講堂など30余の建物が並び、多いときには300人を超える僧が学んでいたそうです。13年以上に及ぶ全寮生活で、学問や勤行のほか、給仕や掃除、衣のたたみ方、礼儀作法なども厳格に教えられました。 今回の特別公開では、壇林教育の規範である文書「山門永則」、日講上人(1626~98)による日蓮宗の入門書「録内啓蒙」の版木が公開されます。 このほか、秘仏の妙見大菩薩像、また、伝教大師作と伝わる三面大黒天像も拝観することができます。