『ハイキュー!!』劇場版、海外で大ヒットも賛否両論の結果に ファンの反応と評価を分析
映画への評価
さて、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』に向けられた実際のレビューでは、どのような意見が目立ったのか。映画評論サイト「Rotten Tomatoes」では批評家スコアが71%、観客スコアが99%と、その数字からも作品ファンがかなり満足している様子が伺えた。例えば批評家の意見としてトップに掲載されているNew York Times誌のマヤ・フィリップは、「優秀なアスリートの素晴らしい試合を観戦できる点において、観客席に座る価値がある」とレビューを寄せている。確かに、映画情報サイト「IMDb」に掲載されていたレビューの中にも本作の試合シークエンスの臨場感、アニメーションのクオリティの高さを褒める声が多く見受けられた。特に映画オリジナルの演出となった“孤爪研磨のPOVショット”に触れている観客も多い。アニメシリーズに引き続き、映画の製作を手掛けたのはProduction I.G。第1期から作画の高さと滑らかな動きが高く評価されており、今期海外で最も人気なアニメの一つ『怪獣8号』においてもアクションシーンが話題を呼んでいる。先にも述べた通り、このクオリティの高いスタジオの手腕あってこそ原作でも重要な試合シーンをエモーショナルに描くことに成功したと言えるだろう。 ただ、本作に向けられる声が全てポジティブな内容というわけでもない。The Guardian誌のスティーヴ・ローズは「(作品の)初心者にとっては理解しづらい」と評し、The Hindu誌のアヤーン・ポール・チョウドゥリィは「アニメを熱心に観たことがなくても2つの高校チームのライバル関係をなんとか理解できるが、物語にちりばめられたルールや細かいネタの多さに困惑することになる」と意見を寄せた。反対にIGN Moviesのマイク・マモンは「長年のファンにとって楽しい作品であり、この愛され続けてきたシリーズに興味がある人にとっても面白い入門として機能している」とコメントし、作品に対して知識や愛着がある鑑賞者とそうでない鑑賞者の間で意見が真っ向していることが読み取れる。 確かに完全にアニメシリーズの続編であり新作であるが故に、広い層に向けてはハードルが高いかもしれない。実際、「Rotten Tomatoes」で批評家スコアは高いが寄せられている批評家のレビューそのものの数がかなり少ない。それはつまり、普段映画をレビューする業界人の中で『ハイキュー!!』に馴染みがあり、語れる人間があまりいなかったことを意味しているのだ。公開から1週間しか経っていないこともあるのか、YouTubeでも感想を投稿する動画が想像以上に少なかった。投稿しているのはやはり普段から『ハイキュー!!』を追っていたアニメファンがほとんど。逆に日本アニメ映画で海外の興行収入にかなり影響を与えた『劇場版 呪術廻戦 0』の北米公開時には、普段アニメを観ないような批評家などあらゆる観客がYouTubeやその他のプラットフォームで感想を述べているのが印象的だった。それもやはり、『劇場版 呪術廻戦 0』がアニメシリーズの前日譚ゆえに物語に入りやすかったことが関係しているだろう。 今回はじめて北米で劇場版が公開された『ハイキュー!!』だが、もしかしたらこれまでのアニメ総集編の方が初心者向けという意味で良かったのかもしれない。実際、初週興行収入ランキングの7位に食い込んだものの、2週目にはランキング圏外となってしまった。その結果からも、作品を待ち望んでいたコア層が早く観に行き、それ以外のライト層にあまりリーチできなかったことが伺える。しかし、6月12日にはフランス、ベルギー、ルクセンブルグで、6月25日からはドイツとオーストリアで公開を控えている。特に日本アニメの人気が高いフランスでも、多くのファンが本作を楽しんでくれることに期待したい。 ■参照 https://www.cbr.com/haikyuu-favorite-characters-myanimelist/ https://www.boxofficemojo.com/title/tt30476486/ https://www.rottentomatoes.com/m/haikyu_the_dumpster_battle https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W22/?ref_=bo_wey_table_6
アナイス(ANAIS)