『ハイキュー!!』劇場版、海外で大ヒットも賛否両論の結果に ファンの反応と評価を分析
欧米のアニメ人気は依然として衰えることがないが、5月31日から北米で公開された『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が初週興行収入ランキングで7位に食い込んだのを見ると、やはりその熱を実感せざるを得ない。本作は日本で2月16日に公開され、5月1日には観客動員数699万人をもってして興行収入100億円を突破した。映画館のグッズの売れ行き、アニメイト本店のコーナーの広がり方はもちろん国内では視覚的にその人気ぶりが日々見受けられるのだが、実は欧米でも『ハイキュー!!』は人気が高い。 【写真】まさに試合そのもの…『ハイキュー!!』劇場版の場面カット(複数あり)
初の北米劇場公開へ
『ハイキュー!!』はこれまで海外の各アニメアワードで30部門ノミネート、10部門で受賞している。だが人気が高いとはいえど、実は『ハイキュー!!』の映画が劇場公開されるのはこれが初めてである。東京での合同合宿で、因縁のライバル・孤爪研磨と出会った主人公の日向翔陽。日向らが所属する“烏野高校”はカラス、対戦相手である孤爪が所属する“音駒高校”はネコとして、それぞれの学校名に文字った対立構図が由来となる本作のタイトル「ゴミ捨て場の決戦」は、原作でも人気の高いエピソード。 しかし、その人気の高さだけが公開された理由とは考えにくく、それ以上に主な理由としてこれまでの劇場版が同じように人気の高いエピソードを扱いつつも、基本的にアニメの総集編だったことが考えられる。それに対し『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』はTVアニメ第4期『ハイキュー!! TO THE TOP』で描かれた稲荷崎高校戦に続く物語であり、完全新作劇場版2部作の第1部なのだ。アニメ自体は2020年に放送された第4期で更新が終わっており、劇場版の公開までに4年もの月日が経過している。それでも衰えることのなかった人気の理由は、正直国内外ともに変わらないかもしれない。
魅力的なキャラ×スポーツアニメとしての根強い人気
『ハイキュー!!』の人気を語る上で欠かせないのが、やはりスポーツ作品としての魅力ではないだろうか。「Anime Trending Award」2015年から2017年にかけて3年連続で「Sports Anime of The Year」を受賞した本作は、各国においてサッカーや野球などのスポーツに比べるとマイナーだったバレーボールの人気に火をつけたほど。実際、バレーボールのルールさえ知らない視聴者も本作を通して知ることができる親切な描き方、そして競技のファンか否か関係なく応援できる魅力的なキャラクターに溢れていたことが多くのアニメウォッチャーの心を掴んだように思う。 何より、本作も要素として抱える「日常」「青春」「学園」系のアニメは本来なら日本特有の文化が色濃く描かれるため、海外のアニメファンに響きづらい。それに対し、誰もが視覚的にもわかりやすく楽しめる「試合」の要素が強いことは『ハイキュー!!』の人気に直結しているのではないだろうか。最近であればサッカーをテーマにした『ブルーロック』も、同じような潮流で海外ファンを獲得している。その「試合」をいかにスムーズなアニメーションで表現するかも重要なところで、これは「ゴミ捨て場の決戦」が高く評価されている理由にも繋がっていたので後述しよう。 しかし、ただ「試合が観ていて面白いから」という理由では流行るものも流行らない。やはりそこには魅力的なキャラクターたちの存在が不可欠であり、これも作品としての大きな特徴だ。日本でも箱推しに留まらず単推しが目立つ『ハイキュー!!』だが、海外でもやはり特別人気の高いキャラクターは存在する。興味深いのは、それが主人公・日向であること。日向はバレーボール選手としては背が低く、物語の初めは所謂“アンダードッグ(負け犬)”的な立ち位置にいる。海外では逆にチート級な力を手にした最強なキャラクターが“GOAT(Greatest of all time/史上最高の人物)”として好かれる傾向が近年は特に高く、アメリカの配信サイト「Crunchyroll」が発表した「2024年アニメアワード」を受賞した『呪術廻戦』とえいば五条悟であり、同サイトで配信(国内では放送)中最も観られていたと言われる作品『俺だけレベルアップな件』も主人公が急速な成長を遂げ最強になるなど、人気作品を牽引するキャラクターの多くが心身ともに“強い”のだ。 一方『ハイキュー!!』の日向は努力&成長型だ。バレーボールをするには低い身長で、最初は自分の才能やポテンシャルを持て余している。しかしそのコンプレックスをカバーする努力と前向きな向上心がとにかく買われており、アニメ第4期放送後の2021年に集計が行われた「MyAnimeList」による「『ハイキュー!!』人気キャラランキングTOP10」の発表では15,547票を集め、主人公として堂々の1位を記録した。ちなみに彼の人気に次いで影山飛雄が2位(14,427票)、西谷夕が3位(11,498票)、及川徹が4位(10,683票)、孤爪研磨が5位(9,349票)、月島蛍が6位(8,381票)、黒尾鉄朗が7位(6,230票)、木兎光太郎が8位(5,708票)、菅原孝支が9位(5,069票)、赤葦京治が10位(2,453票)という結果になっている。