“吉田沙保里超えの133連勝”レスリング藤波朱理20歳はいつ覚醒したのか? 父が語る“最強”の育て方「強制したことは一度もありません」
「シニアでも世界にいける」確信をつかんだ一戦
中学2年生になると、努力の成果は如実に現れる。2017年6月の敗戦を最後に、出る大会は全て優勝という破竹の快進撃を開始したのだ。さらに地元三重県で開催されたジュニアクイーンズカップで優勝を果たすと、俊一は「これはいけるかも」とヒザを叩いた。 「同じ階級には早生まれのひとつ上の学年の選手も含まれていた。そういう選手と競り合いながらも勝ち切ったので、自信が生まれました」 中学3年生になると、カデット(現U-15)のカテゴリーのアジア選手権や世界選手権にも出場し、いずれも優勝を果たした。 極めつきは翌年、地元いなべ総合学園高に進学して挑んだインターハイだった。学年がふたつ上の櫻井つぐみを撃破。中学時代の雪辱を果たすとともに、1年生にして高校日本一に輝いた。俊一さんはこのときの試合内容を克明に覚えている。 「最初は4点リードされたけど、タックルに3回連続で入って6点を奪って逃げ切った。あの一戦で朱理の実力に対しての自信は確信に変わりました。絶対にシニアでも世界にいける、と思いましたね」 そのために俊一さんは体力作りに加え、組手のスキルを磨くように指導した。 「結局、力はまだなかったので、タックルに入っても潰されてバックに回られての失点が多かった。逆にタックルに入られることはほとんどなかった」 一般的にレスリングといえば、タックルが最もイメージしやすいテクニックだろう。しかしタックルに入るためには、組手によって相手を崩す過程が必要になってくる。 「だから『手を使え』と、組手のことは口を酸っぱくして言っていましたね」 体力作りと組手を徹底して練習することで、朱理は高校生にしてシニアのレスリングでも頭角を現すようになっていく。長所と短所を知り尽くした父という名トレーナーがいたおかげで、藤波朱理はすくすくと成長していった。 <続く>
(「オリンピックPRESS」布施鋼治 = 文)
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