観光客にあえて高いハードルを…ジョブズも愛した京都のお寺の「驚きのオーバーツーリズム対策」
公共性の高い場所で同じことは難しい?
しかしながら、それまで1日2000人が訪問していた場所を150名(最大200名)に制限し、400円の拝観料を3000円(現在4000円)に上げるといった劇的な対応ができたのには、理由がある。 それは、西芳寺が私有地であり、民間だからである。 実際に、アメリカでは、2017年にトランプ大統領が、グランドキャニオンをはじめとする人気の高い国立公園の入園料を30ドル(約4500円)から、一気に70ドル(約1万500円)にひきあげると発表したが、国民の猛反発を受けて、撤回に追い込まれた事件があった。 国立博物館や国立公園の入園料が、いきなり1万円となると、公共性の極めて高い空間や財産をお金持ちしか楽しむことができないということになり、公平性の問題が生じる。 公立図書館が無料で使えるように、真に公共性の高い空間を市場原理で管理することには、多くの人が反対するのではないだろうか。 ディズニーランドやユニバーサルスタジオのような私有地かつ民間企業であれば、需給に応じて自由に価格設定を行うことができ、利用者から1万円以上とっても文句が出ないだろうが、市場原理を援用できる場所は実は限られているのである(これが都市や自然観光地におけるオーバーツーリズム対策の難しさである)。 そこで、国立公園や博物館、都市のように公共性が高くオーバーツーリズムになりやすい場所をどのように管理するかは、金額の多寡はもとより、許可制や交通システム、情報提供の手法など多角的に考える必要が出てくる。 * * * つづく記事〈住民が市バスに乗れないほど観光客が殺到、舞妓さんを執拗に追いかける者も… 京都が苦しむ「オーバーツーリズム」の現状〉では、あらためていま京都に起きていることを紹介する。
田中 俊徳(九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授)