イラン大統領選、改革派候補が「台風の目」 決選投票の可能性も
ライシ大統領がヘリコプターで事故死したことに伴うイラン大統領選は28日、投票が行われる。ライシ師の路線を支持する保守強硬派のジャリリ元最高安全保障委員会事務局長(58)とガリバフ国会議長(62)が有力候補とみられていたが、改革派から唯一、出馬が認められたペゼシュキアン元保健相(69)も支持を伸ばしており、「台風の目」となりつつある。いずれの候補も当選に必要な過半数を得票できなければ、7月5日に上位2候補による決選投票が実施される。 【写真で見る】ライシ大統領が乗っていたヘリコプター 大統領選は、最高指導者ハメネイ師が指名した聖職者などで作る「護憲評議会」が立候補資格の事前審査を行い、事実上ふるいにかける制度となっている。2021年の大統領選では改革派や穏健派の候補者が出馬できず、ライシ師が圧勝。今回も候補者6人のうち、保守強硬派が5人を占めたが、改革派のハタミ政権で保健相を務めたペゼシュキアン氏の立候補も承認された。 世論調査機関「ISPA」が24日に発表した調査では、「投票に行く」と答えた人の各候補の支持率は、ペゼシュキアン氏24・4%▽ジャリリ氏24%▽ガリバフ氏14・7%。一方、投票先を決めていない人は30・6%に上った。こうした中、AP通信によると、27日までに別の保守強硬派の候補2人が撤退を表明。両候補の支持がジャリリ氏らに流れる可能性もある。 英紙ガーディアンなどによると、ペゼシュキアン氏は外交顧問として、15年に米欧などと核合意を成立させた立役者の一人、ザリフ元外相を起用。選挙戦では米国が離脱した核合意の再建による欧米の経済制裁の解除を訴えた。一方、ジャリリ氏とガリバフ氏は中国やロシアとの連携を強め、経済を改善させる方針とみられる。 イランでは最高指導者が国政の最終決定権を持ち、大統領の権限は限られている。さらに、穏健派や改革派の実力者が立候補できなかったことから、失望した国民の多くは棄権するとの見方もある。だが、ペゼシュキアン氏の陣営は選挙戦で「棄権すれば、イランをひどい状況に導く少数派に力を与える」と訴えている。 ライシ政権は22年、全土で広がった女性権利の向上などを求めるデモを厳しく弾圧し、国民の怒りを招いた。ペゼシュキアン氏は強硬弾圧には最も批判的とされ、当時のデモ参加者らに支持を広げられるかが注目される。【カイロ金子淳】