金髪はしんどい!真空ジェシカ・ガクの金髪秘話
4年連続M-1グランプリの決勝進出を決めた真空ジェシカ。金髪がトレードマークのガクさんが金髪の苦しみ、楽しみ、嬉しみについて綴ります。(「群像」2024年7月号より転載) 【写真】真空ジェシカ・ガクさん
金髪ってめちゃくちゃ痛いのしってる!?
きっとこれを読んでいる金髪じゃない皆さんは、金髪の事をナメているだろう。 知人が急に髪の毛を金色に染めて来たら「え、髪色どうしたの(笑)」と言うんでしょ。なんか心境の変化でもあったのかな、くらいのライトなトーンで。最近は金髪にしてる人が多くて、以前より気軽に金髪にできるような時代だと思う。金髪イコール不良なんていうイメージも無くなってきた。でも、だからって金髪にした人に対して軽くイジっておしまいにしないでほしい。金髪の気持ちをもっとわかってよ。 あ、えっと、なにも金髪にする事の覚悟とか意味を語りたいわけじゃない。そんなのは知らない。金髪にする事を深刻に捉えてほしいわけじゃなくて、僕が言いたいのは「金髪にするのってめちゃくちゃ痛いからね!」って事。それだけ。金髪というのは、頭皮をとてつもなく痛めつけないと辿り着けない景色だ。数時間かなりの痛みに耐えたその先にある。それを沢山の人にわかって頂きたい。 だから金髪にした人にかけてほしい言葉の正解は「痛みに耐えてよく頑張ったね」だ。「感動した」まで言ってしまうとそれは首相。ただただ労ってほしいんだ。それだけが僕の願い。自然にその言葉を出してもらえるように、金髪の痛みについて詳しく書かせて貰いたい。 まず自髪紹介をすると、僕の金髪歴は4年。2019年まで脱色経験は無し。コロナ禍に入り、ステイホーム真っ盛りの時期に金髪にした。人生で一度は髪を金にしてみたかったけど恥ずかしくてずっと踏み出せなかった。緊急事態宣言が発令されて人に会う機会がめっきり減ったので、その隙にこっそり金髪にした。夏休みの間だけ髪を茶色に染める高校生と同じ発想だ。
誰にも気づかれないような茶髪にして下さい
なんなら高校の時、僕もそれをした事がある。髪を染めて誰かに茶化されたら恥ずかしいから、美容院で「誰にも気づかれないような茶髪にして下さい」と頼んだ。「気付かれなくていいんですか?」と不思議そうに言われた。そりゃそう。高校生がなけなしの五千円払って「ほぼ染めなくていい」と言ってくるのは意味がわからない。 それでも美容師さんは深くは追及せずに、仄かな茶色に染めてくれた。光の加減でたまに茶色く見える程度の、ブラックコーヒーくらいの色だった。そんで休み明けそのままの髪色で学校に行ったら友達に一瞬でバレて「なんかちょっとだけ染めてね?(笑)」とイジられた。そこで”誰にも気づかれないくらいの茶髪に染めること”が何より恥ずかしい事だと気付いて、赤面しながら「染めてない」と言い張った。それが僕の初めての染髪体験だ。 話は戻り、あの頃から精神的にほぼ成長しなかった僕は”恥ずかしいから人と会う機会が少ない時期にイメチェンをしたい”と思ってコロナ禍に金髪にする決意をした。 そして知る事になる。金髪が、ハードな試練を乗り越えた者だけに許された髪色であるという真実を。美容院で金髪になりたい旨を伝えると、美容師さんがまず僕の髪にクリーム状の何かを塗り込む。脱色するための物だろう。白くて少し紫がかった、ほぼ”ねるねるねるね”みたいな何かを。 時間が経つにつれて少しずつ頭皮がピリピリしてくる。銭湯にたまにある電気風呂に頭を浸けてるみたいな感覚だ。一通り塗り終わると「少し時間を置きますね」と言って美容師さんがどこかへ行った。 ここからが地獄。頭皮の痛みは徐々にピリピリなんて可愛い擬音では表せないくらい強くなっていく。痛いというより熱い。目を閉じてたら「僕の頭、燃えてる?」と思っちゃう熱さだ。僕の頭上でチャーハンを作っているのかと錯覚する。だとしたらお米がパラパラでとっても美味しい黄金のチャーハンが出来上がるだろう。しかし目を開けて鏡に映るのは、頭にねるねるねるねを塗られた僕だ。納得できない。せめて髪色は黄金に仕上がってくれと願う。 何とか熱さに耐えてクリームを流してもらう。流したらスッキリするかと思いきや、ジンジンと痛み出す。数秒に一回強い痛みが頭皮を襲う。ドラクエで毒の沼地を歩いてる時ってこんな感覚なのかな、と思う。まさか美容院に来て”チャーハン”と”ドラクエの勇者”に感情移入する事になるとは。