尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領弾劾訴追案の採決が与党議員の投票不参加により成立せずに終わると、米ニューヨーク・タイムズは７日「これからは彼（尹大統領）の問題は彼ら（与党）の問題になるかもしれない。韓国の政治的不確実性がさらに長引くことになった」と分析した。同紙は弾劾案投票不成立の背景と今後の政局見通しを詳細な分析記事で重点的に伝える一方、汝矣島（ヨイド）の国会議事堂前にあふれた市民の弾劾要求集会の熱気を伝え、「土曜日の国会前集会は氷点下の寒い天気にもかかわらず最大規模で開かれた」と報道した。 同紙は「韓国の権力の中心地（汝矣島）をデモ隊はどのようにいっぱいあふれたか」という記事で、「尹大統領の３日の戒厳宣布後に全国で（大統領辞任要求）デモが激しくなっている。７日の尹大統領弾劾の試みが必要な議決定足数を確保できず、韓国を揺るがした政治的激変と不確実性が長期化した」と診断した。続けて「この日国会採決を控えた午後３時になると国会前は集会の群衆であふれ、全国から集まった数万人が尹大統領の辞任を促した」と伝えた。 ◇「韓国では政治的反対表明の時にろうそく集会」 この日汝矣島の国会前で開かれた「尹錫悦退陣汎国民ろうそく大行進集会」には警察発表で約１５万人が集結した。全国民主労働組合総連盟など主宰側発表では１００万人だ。同紙は「国会で投票が進行する間、デモ隊はろうそくとさまざま色と形のケミカルライトを手に持って国会周辺に夜遅くまでとどまった。韓国では政治的反対を表明するためにろうそく集会を開く伝統がある」と報道した。 同紙は大型鳥瞰図写真を利用して軍用ヘリコプターの着陸を防ぐため国会前の芝生に大型車両をあちこちに止めた様子と、国会正門前から汝矣島公園をいっぱいに埋めたろうそく集会の群衆を紹介した。また、国会正門前に設置された韓国交通公団の監視カメラの映像を掲載し、夜遅くまで国会前の大通りを埋め尽くした群衆を見せたりもした。同紙は「午後９時ごろに尹大統領弾劾案可決に必要な票が十分でないということが明らかになり参加者の規模が減り始めた」と伝えた。その上で京畿道富川（キョンギド・プチョン）から来たという集会参加者パク・スビンさん（２９）の「週末ごとに来る計画だ。来週月曜日からはさらに多くの人たちが来たら良いだろう」という発言を載せた。 ◇「保守集会では弾劾否決予想に歓声」 同紙はこれとともにソウルの光化門（クァンファムン）広場に集まった尹大統領支持者による保守団体の集会についても伝えた。同紙は「弾劾案の採決が始まったが可決が難しいと思われるという演説者の発言が出ると参加者は歓声をあげた」と報道した。続けて「地面に座っていた国会前集会の参加者と違い光化門の集会では参加者向けにいすが設置されていた」と伝えた。光化門の集会出席者数は警察の非公式な推定で２万人だ。主宰側は１００万人が集まったと主張した。 同紙はまた「弾劾を回避しようとする韓国国政指導者のやり方はさらに大きな混乱を呼び起こしかねない」という記事で与党「国民の力」が投票不参加を党論に決めた背景と今後の政局がどのように流れるのかを集中的に分析した。同紙はまず、「米国の最も重要な同盟国のうち１カ所で政治的不確実性と混乱が長期化する兆しを見せている」と診断した上で、「途轍もない今回の戒厳ドラマは韓国に軍部統治が再び始まる恐れがあるという恐怖を呼び起こし、人々はこれに対する抗議の意として街頭にあふれ出た」と指摘した。その上で韓国国民の７０％以上が尹大統領弾劾を支持したという調査結果を紹介した。 ◇与党の投票不参加に「朴槿恵のトラウマ」 同紙は「国民の力」所属議員が弾劾案採決に参加しない理由をめぐり、「部分的には２０１６年の当時の朴槿恵（パク・クネ）大統領弾劾で体験したトラウマに起因するもの。尹大統領が弾劾されれば保守指向の大統領２人が続けて弾劾により大統領職を失うことになる」と指摘した。続けて「尹大統領弾劾の法的根拠は十分だ。『国民の力』はこの事実を知っていたが時間を稼ごうとしたもの」という政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表の分析を掲載した。 同紙は第一線から退く意思を明らかにした尹大統領に対しては、「特有の虚勢のために今回政治的自殺行為を選んだと分析家は話している」と伝えた。その上で、「パク・ソンミン氏は『彼はもう政治的に死んだ人』と話す」と説明した。 同紙は今後の政局と関連しては、「野党は尹大統領弾劾を再び推進すると明らかにした。尹大統領の退任は、２０２２年の大統領選挙で尹大統領に僅差で敗れたが現在世論調査で次期大統領として最も高い支持率を見せている李在明（イ・ジェミョン）民主党代表の次期大統領選挙の見通しを明るくするだろう」と予想した。