イジメられっ子が救世主に?「マジで神マンガ」「なろう系かと思ったけど…」ド定番ストーリーをNo.1ヒットにした3つの要素
■webtoonヒット作の三大要素は「キャラ」「ドラマ」「サービス」
――「何度も読み返している」という読者コメントも散見されています。作品の世界観を構築する際のこだわりは? 【江藤俊司さん】相反するようですが、「無理して説明しない&出し惜しみしない」の2点です。特に序盤は、キャラクター表現&ストーリー進行に必要な情報以外はすべて削ぎ落として、バトル描写や世界観を感じてもらうことに注力しました。連載開始前、設定等はかなり詳細に詰めていましたが、物語の進行に合わせて、なるべく無理が生じないように補足しています。逆に、ストーリー内に出てくる謎や伏線などは、進行上どうしても開示できないものを除き、出し惜しみせず、可能な限り早く作中で回答&回収するようにしています。「なるべくモヤモヤを残さずワクワクしていただく」というのが基本方針です。 ――担当編集として、遠藤さんが話の終わりや予告、次の話の始まりなどで心がけていることはありますか? 【遠藤寛之さん】話の終わりは「ヒキ」と呼ばれる部分で、ヒキは毎回すごく意識しています。「ワクワクするヒキになっているかどうか」はすごく意識していて、例えば「強敵が出てきてピンチ!」で終わるのではなく、その強敵に対して「主人公や味方キャラクターの逆転の一手を示唆」して終わらせることで、次の話での主人公の活躍に期待感を持つことが出来ます。読者の方は「ヒキ」に対して、このあとどんな楽しい読書体験が待っているのか、を期待しているので、それをイメージしやすいようなヒキにするのが大切だと思います。話の始まりの部分は「掴み」と呼ばれる部分で、ここではその話での「達成コンセプト」や「キャラの行動目的」を見せることで、読者の方がその話に何を期待して読めばいいのかを示唆することを心がけています。 ――LINEマンガだけでなく、近年バトルファンタジー作品はかなり増えている傾向にあります。他の作品との差別化や読者をひきつける要素など、この作品独自でこだわった点はありますか? 【江藤俊司さん】差別化というほどではありませんが、意識したのは、「主人公である透晴以外のキャラクターも愛して欲しい!」という気持ちで登場人物を増やし、キャラクターを立てていったことだと思います。結果、透晴と同等、場合によっては透晴を凌ぐ人気を獲得するキャラクターが多数出て来ました。多様な世界観や人生観を表現するには、“良い”登場人物が多数必要になりますので、現在のスタイルを選んで正解だったと思っています。 ――編集者の視点ではいかがでしょう? 【遠藤寛之さん】ヒットする作品には「キャラ」「ドラマ」「サービス」が三大要素としてすごく大切だなと思っていて『神血の救世主』はこの3つがきちんとバランスよく配合されていると思っており、それが人気につながっていると分析しています。特に「キャラ」や「ドラマ」はすごく意識しています。初期リリース話数である15話くらいまでの部分はwebtoonという市場で勝負する上で、人気傾向のある主人公の活躍に集約するような展開を意識していました。ですが、リリース直後に一定の反響を得て、長く続けられそうな兆しが見えてからは、長期連載に耐えうるようなキャラクター人気の獲得に舵を切っていったことで、結果差別化と人気につながっていったのかなと思います。 ――三大要素の「サービス」についても聞かせください。 【遠藤寛之さん】例えばwebtoonのヒット作でよく見られる「ド派手なエフェクトを用いた画作りによる主人公の無双展開」などは読者へのサービスとなり、その部分に期待して読まれている方も多いと思います。『神血の救世主』の場合はそこからさらに味方のキャラクターに「読者の方が喜ぶギャップ」を持たせてキャラクターを立たせたり、キャラクターの対立や過去を描いてドラマを生み出したりすることで、キャラやドラマ自体が読者にとってのサービスとなるような展開を心がけています。