熱中症予防には梅干し ”博士”が効果を解説 JAのおすすめレシピも
抗酸化物質がリスクを低減
炎天下で作業することも多い農家にとって、災害級の酷暑から命を守る対策が欠かせない。熱中症で失われやすい塩分やミネラルを手軽に補給できるのが梅干しだ。“梅干し博士”で知られる、大阪河崎リハビリテーション大学の宇都宮洋才教授に、梅干しの熱中症への効果や梅本来の機能性を聞いた。 【図】JAが公開する梅ジュースの作り方 梅干しを食べると夏ばてしにくいのは昔から知られていたが、梅干しが、熱中症予防に作用するメカニズムが明らかになったのはこの10年ほどだ。 宇都宮教授らでつくるチームは2013年、梅干しに含まれる抗酸化物質が熱中症のリスクを低減することを突き止めた。 暑さによって体温が上がると、体温を下げるために血管を広げたり汗をかいたりと、体内はストレス状態になる。宇都宮教授は「こうした体内でのストレスから体を守る抗酸化作用を持つ酵素(SOD)が生物には備わっている。SODより活性酸素が多いとストレス状態となり、熱中症の恐れが高まる」と指摘する。 宇都宮教授らは、ラットに「梅干しと水」(濃度1%)、「塩水」(同)、「水」をそれぞれ与え、37度の炎天下での活動量の違いを検証。すると、初めの40分間では「梅干しと水」を与えたものが最も活動量が多く、SODの活性率も高かった。また、ラットを室温に戻した時も、活動量が最も早く回復したのは「梅干しと水」を与えたものだった。 これまでの研究で、梅には「ピノレシノール」や「リオニレシノール」などの抗酸化物質の総称「梅リグナン」が含まれていることが分かっている。 宇都宮教授は「梅本来の物質が、体内の抗酸化作用を活性化させる」と強調。梅自体を食べることでも熱中症のリスクを軽減できるという。(聞き手・木村泰之)
食べやすく スイーツ感覚の品いろいろ
収穫量が全国の6割を占める和歌山県のJAは、熱中症予防へ梅ジュースや、スイーツ感覚で食べられる梅干しを提案する。 JA紀南は、梅ジュースのレシピをホームページやユーチューブで公開するなど、消費拡大を呼びかける。 JA加工部の福嶋琴乃さん(36)は「梅ジュースを牛乳で割ると子どもにも飲みやすいヨーグルト風味になるので、幅広い世代で熱中症対策が取れる」と勧める。 JA紀州は特産のミニトマト「優糖星」の果汁に漬けた梅干し「tomato-ume(とまと梅)」を製造。09年の販売から売り上げを毎年伸ばし、23年度は37万個と、ヒット商品に成長した。 梅を極早生ミカン「ゆら早生」の果汁で漬けた「みかんこい梅」も、販売を始めた19年以降人気を集める。ほんのりとミカンの香りがし、甘味のある味わいでスイーツ感覚で食べられる。
日本農業新聞