吉岡里帆が「本当に最高」と感激した、『情熱大陸』ナレーションとは? 窪田 等が“声で伝えるポイント”を語る
映像にもっとも適した形で声を届けたい
吉岡は窪田の印象的なナレーションとして、 2010年に『情熱大陸』で放送された画家・石井一男の回を挙げた。 吉岡:女神を描いていらっしゃる画家さんの回ですね。 窪田:あれはすごかった。 吉岡:映像では、取材に行かれた石井さんが1人、影絵で遊んでいらっしゃった。ディレクターさんは台本に「石井一男は影絵で遊んでいた」と書いていたと。ですが、窪田さんは「“石井一男は”を取ってもらえますか」とおっしゃったそうですね。この話が本当に興味深いです。 窪田:と言いますのも、邪魔じゃないですか。「石井一男は影絵で遊んでいた」と言うと、ちょっと距離感がありますよね。「影絵で遊んでいた」と言うと、ちょっと近付くじゃないですか。 吉岡:全然違います。急に近くなりました。 窪田:僕はそういう風に表現したかったんです。ディレクターに取っていいですかと聞くと、さらに「窪田さん。“遊んでいた”だけでやってくれる?」と。 吉岡:このやり取りが痺れます! 窪田:そうなると、もっと近くにいかないといけない。単に「遊んでいた」と言ってもいいのでしょうけれど、自分としてはそれだけじゃつまらないなと思って調整したんです。 その場の情景が想像できる「遊んでいた」のナレーションに、吉岡は声を弾ませて喜んだ。 吉岡:うわ、痺れる! 本当に最高です。 窪田:言葉の響きによって伝え方が違うんですよね。 吉岡:おこがましいんですけど、私もデビューしてからナレーションの仕事をさせてもらっていて。読み方の語尾をほんのり明るくしたり、こちらの感情が乗る瞬間を自分の耳で聞いた瞬間、「お客さんに伝えられるかもしれない」と希望が見えたことがあったんですね。この仕事はなんて楽しいのだろうとそのとき思いました。それってやっぱり、レジェンドの窪田さんたちが築いてこられた“丁寧な仕事”を、子どもの頃から聞いてきたからなんだろうなって感じました。 窪田:そうおっしゃっていただけるとすごく嬉しいです。そこまでの意識はないですけどね(笑)。ただ、「こういう風に表現したい」という(思いがある)。「こういう風に言えば伝わるだろうか」「ここは優しく言いたいな」とか、そういうことを考えながら読んでいるので、そのシチュエーションに一番合った読み方を模索しています。