磯村勇斗 映画製作現場の環境改善に積極発言「仲間を探しています」 第37回東京国際映画祭「ウーマン・イン・モーション」
男性のインティマシーコーディネーターも必要では
昨今、話題にあがるようになったインティマシーコーディネーター(ヌードや性的描写などのシーンの撮影をサポートするスタッフ)について、磯村は俳優の視点で「男性には男性のインティマシーコーディネーターがいても良いのではないか」という意見をシンポジウムで語った。インティマシーコーディネーターがいない現場で裸のシーンを撮った際に「自分では大丈夫と言いながらも、違和感を抱いて、刃の薄いカッターでちょっとずつ傷つけられているような感覚になったときもありました」という。 シンポジウムでは「HOW TO HAVE SEX」の現場について「10代のキャストのためにインティマシーコーディネーターだけでなく、カウンセラーも常駐させたそうだ」という指摘があった。磯村も、石井裕也監督の映画「月」のさとくん役など難役を演じているが、カウンセリングを通さない役作りに今まで問題なかったという。ただ「自分では気づかないところで役に入り込んでしまって、気持ちのコントロールが利かなくなってしまうようなことがあるとしたら必要かもしれません。『月』でいうと、誰か、もしくは自分を傷つける恐れがあったなら、カウンセリングの活用も有効だったと思います」という。一方で「ただそうすると、カウンセラーも役と正面から向き合って役作りをすることになるので、難しさもあるのではないかと思います」と、演技に真摯(しんし)に臨むからこその発言もあった。 映画業界の問題解決のために取り組んでいることについては「同じような問題意識をもつ仲間を増やしていきたいと思っていて、今探しているところです」という。是枝裕和監督らが主導し、政府に設立を求めてきた映画戦略企画委員会が2024年9月に第1回の会議を開催した。磯村も公式な勉強会に参加するなど、日本の映画製作現場の環境改善について積極的に取り組んでいる。業界の抱える問題の深刻さを自覚したうえで、今後について語った。「1年や2年で変えられる話ではなく、是枝監督らが少しずつ変化をもたらしてくれています。この先10年かかるかもしれないですが、仲間が多ければその期間を短くできるはずです。今は、その仲間を増やす時間だと思っています」
サンドシアター代表 山田あゆみ