「2つのドアの間に閉じ込められる!?」ジワジワ不安が押し寄せる美佐島駅【トンネル駅を探検しよう】
数は少ないが、山岳トンネル内に設置された駅(ここでは「トンネル駅」と呼ぶ、地下鉄駅は除く)がある。利用者には不便だし、建設コストもかかるのになぜだろうか。行ってみるとなかなかおもしろい体験ができるトンネル駅を紹介しよう。 【写真】ホームへの扉は電車が到着するまで開かないし、出口扉はホーム扉が開いている間、開かない (牧村あきこ:土木フォトライター) ホームに入る自動ドア(ホーム扉)は電車が到着するまで開かない。 地上に出るための自動ドア(出口扉)は、ホーム扉が開いているあいだ、開かなくなる。 2つの金属ドアとコンクリート壁の小さい空間。どちらの自動ドアもあかなくなって「閉じ込められたらどうしよう」という心配がじわじわと湧いてくる。 トンネル駅の中でも、最も不安をかきたてる駅構造。それが、北越急行ほくほく線の美佐島駅(みさしまえき、新潟県十日町市)だ。現地へ行って、ぜひこの心細さを味わってほしい。
■ 通過列車の強烈な突風対策で二重の防風扉に 北越急行ほくほく線は、越後湯沢と直江津の山間部を多くのトンネルで結ぶ路線だ(営業は六日町-象潟間)。美佐島駅は1997年のほくほく線全線開業と同時に、赤倉トンネル(全長約10.5km)内に設置された。 以前、越後湯沢-金沢間を走る「特急はくたか」がほくほく線を利用しており、美佐島を時速150km前後で高速通過していた。このときホームを襲う突風は風速25mにも達したという。 この突風から乗客を守るために作られたのが、二重の防風扉だ。 ホームの手前にある小さな空間からホームに入るドア(ホーム扉)は、ホームに列車が止まったときだけ、人が前に立つと自動で扉が開く。 壁の掲示板には 電車が到着するまで扉は開きません 電車が到着しましたので御乗車下さい のどちらかが表示されている。 一方、地上に出るための階段につながるドア(出口扉)も自動ドアになっているのだが、ホーム扉が開いているあいだは開かなくなる。トンネルと地上とで風が吹き抜けないようにするためだ。 電車からホームにおりたときも、ホーム扉は閉まっている。電車が発車した後、しばらくホームを撮影していたので、ホーム扉が開かなくなったらどうしようとちょっと不安になった。結局、ドアの前に立ったら自動で開いたし、「扉が開かない場合は、このボタンを押して開けて下さい。」という非常用のボタンもあったが。 どっちかのドアだけが開く、という仕組みは、宇宙船や潜水艦の気密室と同じ考え方だ。 別記事で紹介したえちごトキめき鉄道の筒石駅にも防風扉がある。だがこちらは手動扉がホームと待合室の間に一つあるだけだ。美佐島駅の防風構造の徹底ぶりはすごい。 入り組んだ通路がまるで“地下迷宮”、夏には霧がたちこめ幻想的な筒石駅 ところが北陸新幹線が長野から金沢まで延伸されるのにあわせて「特急はくたか」が廃止され、快速や超快速スノーラビットという列車運行(美佐島は通過)も2023年3月でなくなったため、現在美佐島にはすべての列車が止まる。以前ほど突風への心配はなくなったが、二重の防風扉の仕組みはそのまま残っている。