時間に追われない”豊かな”葬儀を 鎌倉自宅葬儀社・馬場翔一郎さん
葬儀を“情緒的に“表す
――現在の体制は? 僕が現場の全体を見て、事業計画・数字の面を担当する野村、全体統括の柳澤がいます。パンフレットなど広報制作物はカヤックが担っているんですが、紙質や糸綴じなど細部にもこだわって、時間をかけて作りました。約4カ月の準備期間を経て、8月24日にサービスを開始できました。 ――サービスの特徴は、どんなところでしょうか。 昔のイメージだと、自宅葬ってすごく仰々しくて、手間がかかるという印象を持つ方も多いかもしれませんが、僕たちが提案するのは、家族だけで、お家で自然に過ごしているような飾り付けで、最後にご遺族が一緒にご飯を食べて送り出すといったものです。誰かに手伝ってもらわないといけないとか、鯨幕をはったり、花祭壇を置いたりしないといけないようなものではありません。 ご家族が亡くなってから焦って手配しようとすると思うんですけど、そうではなくて、もうちょっとゆっくり、極端に言えば、一日目は何もしないんです。何もしなくていいから、ただとりあえず亡くなったご家族のそばにいるっていうことが重要なんですよね。どうしても、焦った状態で見積もりをしてしまうと、思ってもないようなプランになってしまったりとか、葬儀屋さん主導になってしまったりするので。なので一日目は何もしないで、少し落ち着いて、判断能力がある次の日に、まずヒアリングをします。故人様がどういう方だったのか、どういうことが好きだったのか、どんな思い出があるのか、そういったことを徹底的にヒアリングして、その中で、それではこういった演出はどうでしょうかと、自然に送れるようなものを提案します。出過ぎないよう、黒子に徹するような役割を果たせればと思っています。 在宅医療や在宅での看取りの延長線上で自宅葬ができたらいいなと思いますが、在宅の医療や看取りは国としては推進しているものの結構ハードルが高いんですね。家族としてはやはり怖いといった感覚があって、家に帰りたいと言っていたんだけどそれが結局できなかった、という場合も多い。でも葬儀だったら、最後に家に帰してあげることができます。 また、時間をかけると、遺体の腐敗などを気にされる方もいますが、ご遺体安置後に自宅葬コンシェルジュが毎日ドライアイスの交換と処置をしますし、今はエンバーミングといって遺体の防腐処理の技術が発達しているので、衛生面でも安心できることをご説明しています。 ――チャット相談もされているんですね。 葬儀屋は電話と資料請求、あとは直接の事前相談というところがほとんどですが、ハードルが高いですよね。カヤックの「プラコレ」というウェディング事業を行う子会社でチャット相談を導入していたこともあり、葬儀を検討する方に気軽に質問してもらって、ちょっとした相談も拾っていければなと思い、採用しています。こうしたインフラの面はもちろん、サービス面にも力を入れて、鎌倉でしっかりブランドを作っていきたいと考えています。 どちらかというと低価格な葬儀ではなく、少しだけでもお金と手間をかけてやりたいという鎌倉市内や藤沢、横浜、都内の方からお問い合わせをいただいています。