『残酷な天使のテーゼ』は「簡単には歌い始められません」 高橋洋子が心がけを明かす
シンガーの高橋洋子が、デビューまでの道のりや今後の展望などについて語った。 高橋が登場したのは、3月30日(土)放送のJ-WAVEの番組『ORIENT STAR TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。
30年間歌い続けてきた『残酷な天使のテーゼ』
高橋は幼いころから音楽に囲まれた環境で育ち、1987年に久保田利伸のコンサートツアーでサポートメンバーとして参加し、キャリアをスタートさせた。その後、松任谷由実などさまざまなアーティストのライブやレコーディングに参加し、1991年にソロデビューを果たすとレコード大賞新人賞をはじめ、さまざまな音楽賞を獲得。1995年、のちに社会現象まで巻き起こしたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌『残酷な天使のテーゼ』を歌い、ロングヒットを記録。以降も映画主題歌や関連楽曲などを多数担当している。 市川:2021年3月、ついに『エヴァンゲリオン』シリーズが完結しました。約30年関わっている方からすると、どういった気持ちになるんでしょうか。 高橋:「つい」なのか「もう」なのか「やっと」なのか、全方向にいろいろな想いがあります。 市川:主題歌『残酷な天使のテーゼ』を歌い続けてきたことに対してはどういう想いですか? 高橋:まさか30年もこの歌を歌い続けることができるとは思ってもいませんでした。社会現象は何度も波があり、そのたびに「え、これなんの波?」って思いながら波にもまれて、たどり着いた先が今という感じです。 市川:もともとの放送じゃなくて再放送で1回すごくブレイクして、そこからまた第二世代があったり映画が出たり。 高橋:「これはどうなっているんだ」みたいな論争が毎回あるという。 市川:確かに。 『残酷な天使のテーゼ』はカラオケで歌う人も多い楽曲でもある。 市川:「あんな難しい曲、みんなよく歌えるな」と思いませんか? たぶん日本人の歌唱力の底上げにものすごく貢献していると思います。 高橋:みなさんに伺うと、達成感があると。でもよくよく聞くと難しいとも思っていない。「カラオケはこれだよね」みたいな感じの方にとってはすごく「アゲソング」なのかなと。仕事にしている私としては毎回「あそこに気をつけなきゃ」というのはあります。 市川:洋子さんのレベルでもあの曲は難しいのでしょうか? 高橋:私のレベルはたいしたことはないんですが、ただ「音程や活舌に気を付ける」とか、特に当時の印象のままなるべく歌おうとすると、簡単には歌い始められません。 市川:当時のイメージのままというのは、こだわっているところなのでしょうか? 高橋:結局アニソンは、アニメがあってそれについているソングじゃないですか。だから「どうも高橋洋子です」という私のアイデンティティはいらないわけですよね。 市川:作品があってストーリーがあって、そこに関わる主人公や登場人物があってということですよね。 高橋:そっちがメインですから。だから私自身がイメージを壊すようなことはできないかなと思っています。今のほうが昔より練習していて。やっぱり声も歳をとりますから、今は当時の歌の真似をしています。 市川:へー! 高橋:寄せていく。それでも声が歳をとっていますけど、なるべくそのイメージを崩さないように歌うのは心がけていますね。 市川:努力というか、哲学ですよね。作品へのリスペクトもありつつ。 高橋:すごいリスペクトですよ。 市川は「洋子さんの思う「『エヴァ』らしさとは?」と問いかける。 高橋:哲学的で、常にそうだったり、そうじゃなかったりするんです。1995年に『エヴァンゲリオン』シリーズがスタートして。だから30年前ですよね。その当時は、哲学的なものがアニメで出るというのは、なかったわけではないでしょうけど、こんな風にヒットしたものは先駆者的なものだと思います。しかも主人公が強くないんです。 市川:確かにそうですね。 高橋:それまでは、たとえば主題歌もヒーローの名前が入っていたりします。だけど主題歌にも一切『エヴァンゲリオン』という文字は入っていない。そして主人公は強くない。でもそれってもしかしたら、いつもみんなが映し出す自分の中にある一部なんじゃないかなと。観返すたびに姿、形を変える作品。自分が進化した分、どこを観るのか、響くのか。哲学的なものって深いから、そういう風に形を変えるんだと思うんです。極論から言うと、その人を映し出す鏡のような作品でもあるのかなと。