1200年の伝統 上総十二社祭り 水辺の物語 千葉県一宮町
どこまでも続く青空に、九十九里浜の海岸線がのびる。その波打ち際を、若い衆に担がれた神輿（みこし）が次々と駆け抜けていく。 【写真】釣ケ崎海岸に集結した神輿。海岸に立つ鳥居の下、１０００人以上の若い衆が気勢を上げた 太平洋に面した千葉県一宮町の釣ケ崎海岸。サーフィンの名所としても知られ、東京五輪のサーフィン会場にもなったこの地で毎年9月13日に行われるのが「上総（かずさ）十二社祭り」の神幸祭だ。 十二社祭りは、同町の玉前（たまさき）神社の祭神「玉依姫（たまよりひめ）」が海から釣ケ崎に上陸したといわれ、その一族である神々が年に1度集まることに由来する。平安時代の大同2（807）年に始まったとされ、1200年以上の歴史を持つ。房総半島最古の浜降り神事として、町内外から9基の神輿が参加する。 「槍（やり）が降っても台風が来ても祭りは9月13日。一度台風のときもやったんです。一宮の人の心意気かね、海側に行って『神輿流すんじゃねえぞ』ってやってましたよ」と話すのは、玉前神社総代会の森田一範総代長（74）。 残暑きびしい中、各神社を出た神輿は海を目指す。このうち玉前神社からは重さ約480キロの神輿を担ぎ、釣ケ崎まで片道約8キロの道のりを駆け抜ける。過酷にも見えるが、参加する人々の誇りが伝統の祭りを支える。 「若いときからずっと神輿をやってきましたけど、何が何でも担ぐんだと思って。一宮の玉前さん（玉前神社）は格式があるし、プライドですよね」と森田総代長は祭りへの思いを口にした。 神幸祭の終盤、集結した神輿が年に1度の再会を祝うかのように高々と掲げられた。祭りを無事に終え、それぞれの神社へと帰途に就く。その別れを惜しむかのような掛け声が、浜辺の鳥居に響き渡っていた。（写真報道局 恵守乾）
