古民家銭湯26日オープン「高齢者の居場所に」
和歌山県橋本市高野口町名倉に26日、明治時代の古民家を改装した銭湯「 高野口乃湯こうやぐちのゆ 」が開業する。周辺はかつて高野山参詣の宿場町として栄えた地域だ。銭湯を運営する合同会社「湯原」の代表を務める湯原直子さん(65)は「地元の人から大切にされる新たな地域のコミュニティーを作りたい」と意気込む。(清水美穂)
湯原さんは大阪府東大阪市出身。自身が創業したカーマット製造販売会社の移転をきっかけに36年前、橋本市に引っ越した。 銭湯の開業を考えたのはコロナ禍の時だった。感染対策で会社の営業活動がほとんどできなくなり、市内を散策すると、軒先で手持ちぶさたにしている高齢者を目にした。市も高齢者の居場所作りに取り組んでいるが、湯原さんは「行政のコミュニティーに入り切れていない人がいると気づいた」と振り返る。 風呂を沸かしたり、浴槽を洗ったりすることに負担を感じ、不衛生になっている人がいることも知った。ただし、市内に営業中の銭湯はない。湯原さんは「体だけでなく、『心の衛生』のためにも気軽に入れる銭湯が必要だと思った」と語る。 古くから高野山を訪れる人でにぎわい、明治時代は旅館や飲食店が立ち並んでいた高野口町は、人口減などで活気を失いつつある。「古い町並みや歴史の奥深さといった魅力が失われてしまうのは、もったいない」。湯原さんは古民家を使った銭湯を開くことにした。 銭湯を運営する湯原を2022年に設立。一目ぼれしたというJR高野口駅近くの物件を空き家バンクを通して買って今年4月に工事を始めた。 2棟ある建物のうち、手前の木造平屋は改修して番台や脱衣所にし、もう1棟は取り壊してサウナと露天風呂付きの浴室を新築。物件は旧名倉村の初代村長・小出稀兵衛氏の自宅だった建物だ。湯原さんは「質実剛健と呼ぶのにぴったりな造り。費用はかかるが、できるだけ元の建物を残しながら改修したい」と話す。 番頭を務めるのは、大の銭湯好きという金沢市出身の高瀬勇人さん(28)。高野口乃湯のSNSを見て求人に応募し、7月に橋本市に移住した。高瀬さんは「お客さんとスタッフの間で自然に会話が生まれ、距離が近いのが銭湯の魅力。常連さんも初めての人も楽しめる場所にしたい」と話している。 営業時間は午前10時~午後10時。詳しい情報はX(旧ツイッター、@kouyaguchi_noyu)などで案内。問い合わせは高瀬さん(080・5895・2656)。